株式会社オートバックスセブン 既存店舗のイノベーションを本格化
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従来からの「クルマ好き」に加えて、女性や一般層への訴求を強化



5.総括

「お客さま視点による買い物がしやすい店舗づくり」コンセプトは十分に伝わってきた。具体的なお客さまのプロフィールは、自動車に関して趣味がなく、道具として割り切っている層であり、また事実上、当該業態には遠い存在になっている女性層であることも理解できた。大競争時代の今、ホームセンター、ディスカウンターでついでに購入してきたような需要、ディーラーに任せるだけにしていた層、安値だけで質を顧みなかった層を取り込みたいとする戦略、すなわち「買いやすさの追求」がいかに大事なのかを痛感した。

シンプルでライトなイメージの店舗外観は、業界常識を打破する十分以上で、逆にこんなに質素で大丈夫かと思ってしまう。そんな常識が女性層を遠ざけていたのだろう。スタッフの手厚いフォローは、ディーラーとの勝負への意気込みを感じるし、良い意味で期待を裏切っている。メカニック作業を積極公開しているのも、作業技術に対して自信があるからこそであろう。エントランス正面の、最もお客さまの目につくストールでは、専用の作業機器類を配置してタイヤ交換を集中実施して、専門工具等を見せながらお客さまの関心を高めているのだが、その前に立ち止まるお客さまの姿が多いことが訴求の到達を証明していたのである。

応対についても、店長自ら軽快なフットワークで店内をくまなく回って、お声がけとともにスタッフをフォローする。また同店では中古車の展示販売を、世帯における2台目需要の軽自動車に特化して行っているが、すでに開店以来5台を販売したという。車内を自由に触れるように展示、専任体制で担当が仕入れ等を行う等の内部努力の結果だろうが、応対・提案力がなければ実現しなかったであろう。このあたりも、従来の店舗とは異なる「スタッフの積極性」を示しているのではないだろうか。

もちろん課題もあるだろう。エコ対応の壁面緑化、太陽電池パネルだが、太陽電池パネルや発電モニターは目立たず、気づきにくい位置にあることも影響して、お客さまには伝わっていない模様であった(短時間であるが関心を払う姿を見ることができなかった)。なお、壁面緑化についてはデザイン、造作を再検討する必要があるだろう。

ある限定した時間帯の現象であればいいのだが、ピット壁面のガラス化であるが、エントランスから差し込む日光が反射して、ガラス越しに内部が見にくく、よく見ようとするとガラスに顔をうんと接近させなければならないのも、お客さまの反応が良い故に残念な現象であった。

1階と2階のコミュニケーションは、スタッフのインカムによって成立している模様だったが、カーディーラーでの導入実態を見た限り、インカムは意志疎通手段として確実性に欠けてしまう。なぜか「確認」のため、スタッフが直接話をするための移動が必要になるなど、効率が逆に下がってしまう事態も起こりうる。店長が走り回っているのは、情報を仲介しなければならない状態が起こっている現実があるからではないだろうか。将来はハンディターミナル導入を考えているようだが、まずはスタッフ間のコミュニケーションを妥当化した上でのオペレーション、ツール整備が望まれよう。

「大競争」と書いたが、この業態のライバルはリアル店舗だけでなく、実は通信販売が影響力を発揮しようとしている。同店で注力する売り物のタイヤにしても、価格では通販には太刀打ちできないだろう(同店のみならずどこも同じだが)。通販事業者も、整備工場と提携して取り付け・調整までを安価で対応するサービスを導入している。車両販売が減少するディーラーも黙ってはいまい。そのなかで、大和郡山店は同社2店目のトライアルの位置づけもあってオープンした。少なくとも、女性や他の業態に逃げていたお客さまを呼び込み、顧客化できる環境は整っている。今後は、同店のハード・ソフトに渡るグレードアップを図った結果が、次の店舗のおけるサプライズとなることを期待したい。



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