田苑酒造 焼酎博物館(1)

2005年6月1日


○施設概要


所在地/〒895-1295 鹿児島県薩摩郡樋脇町塔之原11356番地1
営業時間/9:00〜16:00
休館日/盆、年末年始
駐車場/大型バス10台可
入場料/無料
ホームページ/http://www.denen-shuzo.co.jp/



 今や日本酒の大吟醸より人気が高いといわれる「焼酎」ブームである。プレミアムが付いた焼酎は蔵出し時に1升数千円が小売店やネットオークションになると数万円の値が付く。そして焼酎専門店(このような業態も以前は見あたらなかったが)で飲むとグラス1杯(半合)千円を超える“ブランド”となる。そうした銘柄は決して少なくない。そもそも、焼酎は庶民の酒、労働者の見方であった。安価な大衆酒の代名詞だった焼酎が、一時期は日本酒にも見られたブームのように、「幻の」「限定」等ともてはやされている。さぞかし出荷元は景気の良いことであろう。ところがブームには衰退、終焉という宿命がある。すでに焼酎の産地では危機感を募らせているのである。

 焼酎といえば麦、芋、米など様々な素材が使れるようになっている。日本一の産地は鹿児島である。現代のような「焼酎バー」ができる以前、もっと言えば麦焼酎「いいちこ」(これも九州・大分産だが)が大ヒットするまで、さつま焼酎こそ九州人にとってはイコール焼酎であった。その鹿児島の地に明治23年創業、以来、一貫して焼酎の製造・販売を行なってきたのが田苑酒造(株)である。

 鹿児島県内が出荷の中心となる「いも焼酎 田苑」と、東京・大阪・福岡の大消費地を対象とする麦焼酎「田苑」が主力商品である。なかでも昭和57年に発売した、ホワイトオークの樽で寝かせた「田苑金ラベル・田苑ゴールド」は好調な出荷を続けており、全国区の商品として高い人気を集めている。



焼酎博物館の外観は和の風情


 その理由は、同社オリジナルの熟成法による「味」にある。名付けて「クラッシック音楽熟成」という。その通り、クラッシック音楽を熟成中の焼酎に聞かせて発酵を促すのである。ポピュラーや演歌よりも、クラッシックのジャンルが最も効果があるという。同社主力商品の「田苑金ラベル・田苑ゴールド」の発酵タンクにトランスデューサー(機械振動変換器)を設置して、24時間クラッシック音楽を流している。人間にとっての癒し効果が認められているモーツァルトの楽曲が、養鶏の産卵の安定・促進に使用されているように、人間が結果的に良い気分になる焼酎だが、熟成段階でクラシック音楽によって麦そのものが良い気分になっていたわけである。

 いわば産地・鹿児島を代表するメーカーとなった同社には、日本初となる「焼酎資料館」が社屋・工場と一体的に整備されている。焼酎とはどういうものなのか、つまり焼酎に対する知識を高めてもらう啓発とともに、原料別の味見のような体験による焼酎好きの開拓、同社銘柄のセールス・プロモーション空間というよりは焼酎広報センター的な役割を担って1986年にオープンした。企業の文化を伝える企業博物館としては、同社の前身である塚田酒造場時代の使用していた用具類、例えば「チンタラ」と呼ばれる古代蒸留機や木樽、桶の他、古文書、昔の暮らしを伝える民具など約1,400点が往時のままの形で保存展示されている。また同館限定の商品が販売されており、アンテナショップ的な機能もある。

 資料館に使っている建物は、1776年(約230年前)に建てられた、歴史的建造物としても評価の高い熊本県山鹿市にあった酒蔵を、閉鎖に伴い現地まで移築して再利用している。この移設には約1億円が投入されている。


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