田苑酒造 焼酎博物館(2)

●現況

1.来場者

 年間約1万人。誘客対象は日本全国としているが、九州が7割を占めており、関西、関東方面が続く。九州の半数は地元鹿児島県内からである。最近は台湾、韓国、香港などの東南アジアからも増えてきているのは、九州の観光入り込み動向を反映している。
 実は同館の場所はそれほどアクセスに恵まれているわけではない。九州新幹線川内駅から県道42号、県道36号を経由、郡山町方面へ20分の距離にあるのだが、やはり自動車なしでは気が重い。それでも年間1万人を集めるのは、焼酎ブームが追い風になっているとはいえ大したものである。
 そのプロフィールだが、旅行会社のツアーのルートとして団体観光客、近隣の市比野温泉のホテルや旅館に宿泊してその紹介で来たという観光客が大勢となっている。施設のテーマがお酒ということもあって、大人のグループが多いのが特徴だ。帰省シーズンのお盆や正月には、ファミリーも来るが、残念なことに子供は退屈していることが多いという。
 観光以外の企業の商品を通じての情報受発信を果たす企業博物館としては、まず焼酎業界の小売や卸等の流通関係者が、お客様とのコミュニケーション力を高めようと、知識を高めるために利用するケースがある。また、学校関係では、社会見学はもちろん、高校生の企業見学の場としての役割も果たしている。

2.対応

 工場を含めた見学コースが設定されており、基本は「来るもの拒まず」。同館及び工場の見学を含めて約40分のコースだが、希望により短縮にも対応している。事故防止に配慮して、どのような場合でも必ず案内係を随行させている。
 担当部署は総務部で、男女各4名、計8名で手が空いているスタッフが案内係を担当する。以前は売店のスタッフとしてパートを使っていたが、お客様の知識レベルが高くなり、より専門知識が求められるようになったため、現在は全て社員で対応している。
 最近では、来場したお客様に接した数分で、どれくらいの知識が必要なのかが判断できるようになったため、そのお客様のレベルに合わせた説明をしているという。
 ピークは土・日・祝祭日。近隣の温泉地と連携した観光事業として認識し、年中無休(盆2日間、年末年始5日間のみ休館)としているため、ローテーションで休暇を取っている。しかし月曜日だけは全員出勤日として社内の連絡事項、申し送り事項を徹底している。
 営業時間は9:00〜16:00だが、工場は17:00まで稼働しているため、受付を16:00までとしている。

 説明に関しては、マニュアルを作成し、誰が案内しても同じ説明ができるようにしている。
 新入社員が配属になった時は、まずそのマニュアルを暗記させて、先輩社員へシミュレーションを行う。同時に先輩社員の実際の案内に同行して、接客応対や説明方法を見て学ぶ。そして最終的に1人で案内・説明を行うのである。
 お客から自分ではわからない専門的な質問に対しては、その担当部署へ問い合わせ、間に合えばその場で、間に合わなければ後日メール等で回答し、後日スタッフ全員でその知識を共有することとしている。もちろん、企業秘密的な事項は、非回答として了承してもらっている。

 来場客を迎えるに当たって、常に意識していることは「お客様が何を求めていらっしゃっているのか」だという。いかにそれを早く察知して、そのニーズに少しでも満足のいく説明や対応を心がけている。醸造における専門的な知識を求めているのか、簡単な製造工程だけで良いのか、焼酎の楽しみ方を知りたいのかなど、お客様へこちらからも積極的に質問をすることで、少しでも早くお客様とうち解けることも重要だと考えている。
 とにかく、ここへ来て良かったと満足まではいかなくても、納得されてお帰りになり、最終的に焼酎ファン、もっと希望をいうと田苑ファンになっていただければいいなと考えている。



焼酎の製造工程をイラストで案内


クラシック音楽を聴かせながら仕込んでいく



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