自動車販売店舗の再編・活性を刺激する
ホームセンターの新たなチャレンジ
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アヤハディオの「ディオワールド草津店」が
買取保証システム「Fシステム」に加盟、新車販売に参入

安部基史(本誌編集長)


■ホームセンターの状況

 空間通信では2000年当時、“店舗空間の大型化・専門化が進むホームセンター事業の現況を整理する”と銘打ち、ホームセンター業界の動向をレポートアップしたことがある。当時の同業界は、郊外大型商業集積の増加に伴い、店舗数・売上高とも年々右肩上がりの成長を続けていた。

 (社)日本DIY協会によると、売上高のピークは、2005年の3兆9,880億円である。その後は景気低迷による消費不況や通販業態等との競合もあり頭打ち状態が続いており、2010年には3兆8,450億円となった。一方、店舗数は増加傾向が続いており、2010年は4,180店舗である。

 ホームセンターは、食品以外なら扱っていない商品は見当たらないといった抜群のMD力を誇る。しかし、近年の消費不況にともなう低価格化によって、ディスカウンターとの境目が分からなくなるような激しい競争も生じている。従来、扱いが小さかった農業や建設等のプロ需要、さらには生鮮食品の販売にも注力する他、通販にも積極的に乗り出すなどして、生き残りを図っている。立地についても単独出店から他業態との複合出店によるショッピングモール化も見られる。

《ホームセンターの年間総売上高と店舗の推移((社)日本DIY協会)》


 次に商品分野別の売上構成を確認してみよう。同協会が公表している2010年(1〜12月)における『ホームセンター売上高月例調査集計』によれば、2010年の売上構成比のトップは「DIY素材・用品」の22.8%、次いで「家庭日用品」21.1%、「園芸・エクステリア」12.9%で、これらホームセンター“王道”の分野で約5割強を占めている。この他、「電気」8.3%、「ペット」8.1%、「インテリア」7.0%、「カルチャー」4.9%等と続いている。
 直近の発表(2011年11月度)を見ても大きな変動は見られず、「DIY素材・用品」24.7%(金額約346億円)、「家庭日用品」19.8%(297億円)、「園芸・エクステリア」10.9%(165億円)、「電気」11.2%(175億円)、「ペット」7.6%(119億円)、「インテリア」7.2%(109億円)、「カルチャー」5.4%(76億円)等となっており、季節要因も影響しているのか「カー・アウトドア」は4.6%程度(74億円)となっている。


販売シェアが低迷するカー用品販売

 雑貨・日用品に関する大規模・専門的な品揃えをモットーとするホームセンターにあって、自動車関連の用品は主要な取扱品目とされてきた。実際、その品揃えをアピールする店舗も少なくない。
 同協会の『第21回DIY小売業実態調査報告書(2009年度)』によれば、カー・アウトドア分野における「カー用品」(車のメンテナンス用品用材、オイル、タイヤ、ホイール、カーAV、ナビゲーター、カーアクセサリー、電装機器、カーエアコン、バイク用品、各種部品および用品など)の売上構成比は2.7%程度で、DIY用具・素材における「道具・工具」と同様のシェアとなっている。

 他の商品群として比較して、カー用品をどのように評価するかは、利益率や商品の回転等に見なければ断定は難しいが、 “ベンチ入りメンバーに入れるかどうか”の状況ではないだろうか。
カー用品の販売は、カー用品専門店、通販等との競争の波が押し寄せている。もちろんホームセンター同士の競合もある。新車の装備充実やディーラーの攻勢もある。最も深刻なのは、自動車市場そのものの縮小である。
 カー用品専門店では最大手の(株)オートバックスセブンの売上高を見ると、1990年の939億円が、わずか7年後の1997年には2,000億円台(2,147億円)に達するが、以降は足踏みが続いている(2010年2,329億円)。さらに2010年の最終利益は1997年(約100億円)の半分強(約59億円)に止まってしまっている(参考:http://profile.yahoo.co.jp/consolidate/9832)状況を見ても、市場の停滞がうかがえよう。
《2009年分野別売上高の構成比((社)日本DIY協会)》


■アライアンスで取り組むカー用品販売

 一方、用品販売については淡泊だった自動車販売業界、いわゆるカーディーラーはこの状況をどのように捉えているのだろうか。

 新車販売店は、多数の顧客情報を持ち、顧客ニーズを吸い上げながらの提案活動が可能である。従って用品販売の実効性も期待できる。ホームセンターや専門店のようなMDは業態的・空間的に真似できないが、顧客にフィットしたカスタマイズポテンシャルは高い。
 しかし、商売の基本は車両本体の販売であり、収益的にはメンテナンス(サービス入庫)需要にある。これを前提に空間・人間・商品が配置されているのが販売店である。一部で販売店にカー用品店機能を導入するトライアルが見られるものの、用品販売はメーカー主導で設立された系列のカー用品店に頼み、自らは車両販売に注力するというのが大多数である。
 実は用品販売のポテンシャルが小さいことよりも、販売店にとっては重要な課題解決テーマがある。販促活動に立ちはだかる店舗の「敷居の高さ」感の払拭である。解消のため、あらゆるコミュニケーションに取り組んでみても、お客様の「ディーラーに行きにくい。買わされてしまう。後でしつこい」といった認識を一掃できない。何とか、気安く来店いただけないだろうか・・・。

 いま、少子高齢化を迎え景気の浮揚、個人消費の回復が遅れる日本の市場環境からして、競争ばかりの消耗戦を続けても、得るものは決して大きくない。そこで、近年は川上から川下まで、戦略的提携、いわゆるwin-winによるアライアンスで事業の安定化を図ろうとする取り組みが様々な業界で活発化している。
 自動車販売店も例外ではない。販促活動に立ちはだかる自らの「敷居の高さ」感を解消するために、こうしたアライアンス戦略に舵を切り始めた。着目したのは、ホームセンターやショッピングセンターのような大型流通小売業態の持つ強力な集客力である。
 ディーラーの店舗単独だと敷居があって入りにくい。ならば、多数のお客様が集まる場所に出て行って、「店」としての垣根を取り払い、売り場の延長のような空間を創出する。敷居を自ら取り払うことで、お客様はショッピングの「ついでに」回遊してくれる。そうなれば、新たな顧客と発信・接触が可能になる。

 こうして始まったのが、大型流通小売店の同一空間に出店を試みる他、敷地に隣接する場所に出店する、敷地の一角に店舗を構える、あるいはモール環境ならば建物の一角に入居する等の取り組みだ。 カー用品を扱うホームセンターのような大型店ならば、新車購入客やサービス入顧客といった確実な対象に用品を販売できることから、win-winの関係維持が可能になる。

 ただしあくまで「車両はディーラーで、部用品はホームセンターで」購入してもらう構造が前提で、カニバリが起きないような関係構築が前提である。さらに自動車販売店は中小スーパーマーケットよりも多数の顧客を持っているが来店頻度は圧倒的に少なく、ホームセンターにとっては、売上を爆発的に改善するというよりは、販売確実性の確保と割り切る必要もあるだろう。

 例えば、2011年7月にオープンした、ネッツトヨタ神戸の「ネッツテラス新三田店」は、ホームセンター「コーナン新三田店」との複合建設で、上階にホームセンター、下階にディーラーが入居、双方が取扱商品に配慮しつつ(タイヤやオイル等の消耗品はディーラーが対応する等)、お客様の動線を共有する売り場構成となっている。協業的な運営を標榜しているように感じられた。

 自動車販売店のみならず、カー用品店でも店舗の立地そのものを集客力の高い大型商業施設と合体させる動きがある。「オートバックス ザ・モール安城店」(愛知県安城市)や「モンテカルロイオンタウン刈谷店」(同刈谷市)などである。

 本格的に用品需要を掘り起こすというのであれば、これはクルマの購入という入り口から入って、顧客のニーズを吸い上げながら、あるいは呼び起こしながら用品を提案していく商談を積み重ねる必要がある。「小型商談」中心の流通小売業態が「大型商談」の車両販売に取り組むことは、工場の整備、仕入れの安定化、顧客フォロー等、あらゆる面で異質であり、容易ではない。これは中古車も同様である。やはり役割分担力の向上が、アライアンスの成否を決めてしまうのである。

 ところが、自ら売り場にショールームを造作して、新車販売に本格的に取り組むホームセンターが登場した。2010年9月、滋賀県地場大手のホームセンター・ディオワールド草津店は、買取保証型のクレッジット販売「Fシステム」を展開するエフシステム(株)(本社・京都市)の加盟店に参加する形で、軽自動車・コンパクトカーを中心とする新車販売に参入、カー用品の販売を継続しながら、既納客ゼロの状態から1年で100台の新車販売に成功した。

 2012年以降、こうした大手流通小売店の自動車販売ビジネスは加速していくのだろうか?同店を事例に、ホームセンターの新車販売ポテンシャルについて考えてみたい。


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