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北九州学術研究都市〔福岡県・北九州市〕(1)
〜カー・エレクトロニクスセンター設立を目指す〜
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2008年4月8日
レポート:池上志保
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北九州学術研究都市は福岡県北九州市若松区に、先端科学技術の教育・研究を行う大学や研究機関を集積させ、地域産業の頭脳となるべき知的基盤として整備された新都市である。オープンは平成13年(2001年)で、東京では駅や空港に多数の広告看板を展開している模様で、そこで見かけたといった人も少なくないかもしれない。
同都市が掲げている整備の方向性は、「アジアの中核的な学術研究拠点へ」と「新たな産業の創出、技術の高度化」である。
「アジアの中核的な学術研究拠点へ」は、アジアに近いという地理的優位性と、北九州のアジア諸国に対する環境分野などの技術協力の実績などを生かすことによって実現するとしている。
また、「新たな産業の創出、技術の高度化」は北九州市が工業都市として培った西日本最大級の産業技術の集積と、学術研究都市の研究開発機能とを結びつけることにより、次代を担う新たな産業の創出や、既存の地域産業の高度化を図るとしている。
これらの実現によって、北九州市が将来にわたり産業都市として栄える街になることを目指す、というのが上位概念となっている。
なお、北九州市の主要プロジェクトとしてはこの北九州学術研究都市の他に、北九州空港、東九州自動車道、エコタウン、ひびきコンテナターミナルがある(FAIS資料)。北九州空港は、土地整備は国の事業だが、上物に関しては県・市が担当している。
大規模プロジェクトが目白押しだが、ひびきコンテナターミナルも含め、基本的に交通インフラが中心となっているプロジェクトの中で、学術研究都市は『知』の部分の基盤を担っている。いわば、陸・海・空の一帯インフラ整備に『知』の要素を付加する整備構想なのである。
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構成
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【大学・大学院4校】
北九州市立大学 国際環境工学部/大学院国際環境工学研究科
国立大学法人九州工業大学大学院 生命体工学研究科
早稲田大学大学院 情報生産システム研究科
福岡大学大学院 工学研究科
【研究機関10機関】
早稲田大学情報生産システム研究センター
福岡県リサイクル総合研究センター
九州工業大学ヒューマンライフIT開発センター
福岡大学産学官連携センター北九州産学連携推進室
広島工業大学IC設計・プロセス工学教育研究センター
(財)九州ヒューマンメディア創造センター北九州ITオープンラボ
清華大学コンピューター科学技術学部北九州研究室
上海交通大学北九州研究室
九州工業大学JAHNG研究室&健康資源マネージメント研究会
【企業55社(2008年2月28日)】
情報分野を筆頭に、環境、バイオ分野など企業の研究部門を集積。大学と連携しながら最先端の研究・開発を行っている。

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○設立の経緯
北九州市の主導で設立。財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)を立ち上げ、とりまとめている。
○北九州を取り巻く状況と、設立の背景
北九州エリアは長年、工業都市として発展を続けてきたが、中国などの新興国間の台頭による生産性、コスト面から苦戦が続き、また環境の観点からもその地位が低下、平成15年の対全国比の工業出荷額は0.58%にまで落ち込んでいる。また、製造品出荷額では、昭和62年に22,094億円だったのが、平成17年には18,770億円に減少しているという。

(グラフ FAIS資料より)
北九州といえば製鉄の町である。以前は三菱、住友、新日鉄など大企業が工業都市のイニシアチブを取ってきた。また素材メーカーが集積、中小企業が全体の大部分を占めていた。当時は大陸貿易の玄関口という位置づけでもあり、4大工業地帯のひとつとして数えられていた。
筆者が小学生の時に社会科で習った日本の工業地帯にはもちろん、北九州工業地帯は入っていたのだが、近年は瀬戸内工業地域、北陸工業地域などよりも工業出荷額が少ないため、3大工業地帯という呼ばれ方となっているそうで、現在は北九州工業地域との記述が一般的とのことだ。
そのような背景もあり、人口も徐々に減少、現在100万人を割り込んでいるという。
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