大分農業文化公園・「パークアルカディア」(4)

6.訪問してのインプレッション〈2〉

(3)「花昆虫館」
 地域と世界の昆虫を紹介
 一般愛好家が定年後設立した会社に運営委託


 「花昆虫館」の壁や天井はすべてガラス張りで、非常に明るい空間となっている。エントランスロビーには、観葉植物や木製のあずまやが設置されて、自然の暖かみを演出している。

 そこからなだらかなスロープを下ると、正面に昆虫のイラストをあしらった文房具やバッチ類等を販売する「グッズ販売コーナー」がる。一部のマニア向け標本は別として、200〜1,000円の価格帯を中心に、子供がおこづかいで買えるようにと配慮している。人気は木製の野菜・果物をふたつに割ると、メルヘンチックな小さい昆虫が登場するという玩具(350円)である。お年寄りが孫へのお土産に購入することも多いという。

 「グッズ販売コーナー」の横は、「ファーストフードコーナー」で、物販機能が並ぶ。ここには、名物の“ビワ・ソフトクリーム”(300円)がある。食べてみると、ほんのりビワの香りがして、甘いものが苦手な筆者でも何とか平らげることができた。

 更にスロープを下って、やっと1階展示室に到着する。展示室の内装もまた、木目を基調とした暖かみのあるデザインで、展示什器のすべてが低く、子供がわかりやすいようにと配慮されている。そして、一目でスタッフとわかる、緑色のジャンバーを着た説明員が、ある家族連れに解説をしていた。「花昆虫館」の運営・管理を行う有限会社EAO(イーオ)の三宅武氏によれば、常時3名の説明員を配置しており、展示物の横に小さな文字で説明書きをディスプレイしても、たいていは読んでもらえないため、見ているお客様の横から、内容を簡単に案内して、質問があれば実物を前にさらに詳しい説明を加えるという。

○標本だけでなく、生態と一体となった展示

 さらに、展示コーナーの切り口に「大分の昆虫」、「農業と昆虫」など、農業公園独自のテーマを設けて、昆虫のいろんな姿を理解できるように工夫したという。

つまり、テーマに従い標本を飾るのではなく、

(1)“自然環境と昆虫のすみか”では、川の上流から下流までの模型に、環境の変化とすみかをパネルで表示し、それぞれの場所で生息している昆虫を選択。
(2)“黄金虫の輝き”では、高さ約2m円柱型の世界地図に世界各国の黄金虫の標本をゆっくりと回転。

(3)“のぞいてごらん小さな世界”では、顕微鏡でみる小さな昆虫を子供の高さに顕微鏡を設置。

 等のような展示方法を導入している。

 また、大分在住の紙粘土細工人形師が、人物以外の初めての取り組みとして昆虫を選び、2年間かけて足の生え方、羽の広げ方等、生態的な勉強を重ねて、“昆虫の食事”をテーマとする作品を完成させた。「従来の標本だけでは表現できなかった動きをアニメチックに表現し、また昆虫ごとの食事のメニューも表示される、楽しく夢のある作品」(同氏)となったことから、虫が苦手な人を対象としたコーナーの目玉に設置している。
 この他、子供からマニアに羨望のカブトムシやクワガタムシも多数が展示されていた。

○300羽以上が飛び回る蝶の熱帯雨林

 展示コーナーから次の扉を開けると、そこはムッとした熱気とともに、熱帯のジャングルをイメージさせる森林空間が広がる。ここは、蝶の生体を一年中生息させているゾーンである。通路の両側には、熱帯樹、食虫植物、花等が生い茂り、その間を小川が流れ、まさに熱帯雨林の雰囲気である。50、いや100羽はいるであろう、蝶が空中を花から花へ飛び回る、まさに“楽園”である。「オオゴマダラ、シロオビアゲハを中心に、季節によって300羽以上が飛び回ります」(同氏)とその数に驚かされる。しかし、室温は約30度をキープし、湿度も高いため、汗が噴き出してくる。蝶が飛ぶ姿、蜜を吸う姿に感動しながら歩いていると、頭や肩に留まる種類もいた。外敵がいない島に生息しているため、人間を恐れないのだという。途中には、サナギも展示しており(「オオゴマダラ」のサナギは金色でビックリ)、学習の要素も忘れていない。



「花昆虫館」のエントランスロビー


メルヘンチックないちばんのお土産


対話の後詳細説明


「大分の昆虫」コーナー。この切り口は一般的


「黄金虫の輝き」


「のぞいてごらん小さな世界」これらの見せ方も先例あり


 ここの通路はなだらかなスロープ状で、途中にベンチやあずまや風の休憩所を設け、ゆっくりと蝶を見学できるようになっているが、暑がりの方には、この湿気と気温では長居できないかもしれない。
 2階部分のある出口の先には、「蝶展示室」がある。こちらは世界中の蝶の標本展示である。

 先の標本展示室と同様に、
(1)“南国の島へようこそ”で、沖縄県を中心とする南西諸島の各島の環境特徴や、そこに生息する蝶を大きな地図の上にパネルで表示。先ほどの蝶の温室とリンクしている。
(2)“美しさコンテスト”では、カラフルな蝶を同じ系列でくくり、美しい羽の模様を強調。
(3)“世界の蝶”では、生息する地域別に同系列の模様の蝶を集めた。環境が似ていると、同じような模様の蝶が分布する様子が一目でわかる。また地域ごとに標本の高さを変えて、立体的に見てもらう。
 などの工夫がある。

 このように、標本をただ並べただけでも気にならないマニアックな人は別にして、ふつうの子供達がいかに楽しく、分かりやすく見られるのかを展示要件としている。今後も反応を見ながら、どんどん改善していくという。また、蝶のビューティコンテストのようなミニイベントも考えているそうだ。 さて「蝶展示室」を出ると、最初の「グッズ販売コーナー」の横に出る。“入口”“出口”の表示、順路などの案内は無い。つまり、見学は、筆者が辿った順路でも、その逆でもかまわないわけである。


熱帯のジャングルをイメージした森林空間に300羽のチョウ



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