マインランド 尾去沢(3)


3.現況
観光坑道+アミューズメントで構成

現在の施設構成は次の通りである。

1)鉱山歴史の坑道

尾去沢鉱山の800kmにおよぶ坑道のうち、1.7kmを整備して造った観覧施設で、

・岩盤が堅く、しかも保存状態が極めて良い
・自然通気の働きによって換気が良く保たれている
・坑内排水が完全

などの尾去沢鉱山の特徴を十分に活かすように設とされた。
 観覧に利用する坑道は、「石切沢通洞坑」と呼ばれる作業用の主坑道を中心に、銅鉱脈の採掘跡、坑内事務所周辺など実際に使用されていた坑道、坑内施設である。ここを中心に、金山当時の旧坑道を横断する方向で新しく開削された坑道などで構成されたコースである。
 所要時間は、標準コースで約45分(約1.7km)、早周りコース約30分(約1.1km)となっている。

2)シューティングアドベンチャー

 
観光坑道の手前、駐車場の隣地にある。中身は宇宙船「プルトン号」に乗って移動しながら、全車両に装着された総数216丁ものレーザーガンを使って、次々と現われる48個のエイリアン(イガイガー率いるデメーリン、そしてホニョホニョ)を標的として射撃して回るシューティングゲーム。 走行距離800m、乗車時間20分、平成元年オープン。

3) レストハウス

 ログハウス調の建物で「ラムジンギスカン」と「ポークしゃぶしゃぶ(予約のみ)」がメインメニュー。収容人員320名。

4) おやすみ処

 
テラスには、「ファーストフードショップ」(ポテトとソフトクリームの店)、「そば処金山庵」(名物からめそばと秋田名産稲庭うどんの店)、「ラーメン専門店」(比内地鶏スープのキリタンポラーメン、自然の山菜そば みそつけタンポの店)、「鹿角特選味の店」(鹿角りんごをはじめ、果物と農産物販売と食事の店)の4つの飲食店がある。

5) おみやげ館

 
天然鉱石、純金製品、金粉商品、地元(秋田県、鹿角市)の名産品を販売

6) 各種アトラクション

ゴーカート、バッテリーカーなどアミューズメント遊具、ゲームセンターを設置

○坑道観光もある身近なレジャー施設として訴求

 以上のように、「鉱山跡地は産業遺跡として二度と再現できない貴重な歴史的・社会的な財産であり、鹿角地域における観光振興の核としての重責を担うためにも、鉱山の特色と素材を最大限に活かした斬新な観光施設として、歴史性に重点をおくとともに、見る・触る・遊ぶ・学ぶ要素を備えた新しいタイプの総合的観光鉱山遊園地を志向」したものの、遊園地の性格が強くなっているのが現実である。つまり、坑道体験型文化施設よりも、“坑道観光もある身近なレジャー施設”なのである。

 これは、「第三セクターという経営だが、いつまでも出資者の行政や親会社の三菱マテリアルに甘えられない。単独事業としての成立を目指す事」(同・阿部氏)とする運営意識の反映でもある。

 さらに、雪国で事実上冬季の稼働は期待できないため、残る3シーズンが誘客の勝負となる自然環境、そして坑道そのものの意味や歴史性は奥が深いが、リピートにつながるかという論議においては必ずしも肯定されないという運営者のポテンシャリティ認識が投影されている。

 このため、“マインランド”の意義や語感イメージを大事にしながらも、実際に訪れてみると、その看板をくぐるとまずは誰もがわかりやすい遊園地が現れて足を止めさせるゾーニングとなっている。

 しかし、実際に現地を訪れてみると、これはブームとの絡みもあるのだが、遊園地よりも現存するまず鉱山設備の廃墟郡を訴求する方が、インパクトになると感じた。




施設構成。駐車場は広大である。


4.訪問してのインプレッション

(1)アプローチ
 遊園地よりも遺構をファーストコンタクトに


 秋田県鹿角市は、東北二大観光地である十和田と八幡平ほぼ中央にあたる交通拠点である。取材陣は、国道282号を十和田から南下する格好で、主要な交差点名とそこに示されているだろうサイン看板を頼りにクルマを走らせた。幸い、途中までの角館市や鹿角市は国道と並行するJR花輪線に沿って町並みが形成されているため、ほとんど迷うことなく、また予想通り主要地点でのサイン看板のおかげで、これが最終アプローチと思われる山道に進む。
 ところが、途中、上下どちらでも尾去沢マインパークには行けますよ、という分岐が現れる。我々は、見た目道路幅が広い新道(?)を選んで上りの方へ進むと、間もなく同所の広い駐車場、旧尾去沢鉱山の付帯建物(選鉱場、製錬所など)が一望できるエントランスに到着する。

○廃墟となった遺構郡が独自の景観を支配

 この外観はとても印象的である。既に廃墟と化した建築、秋の東北の西陽を遮る巨大な煙突。ヤマに沿って掘られた、塹壕のごときコンクリート。そして、何かの記憶を封印するかのように整地された広場。ここまで、旧鉱山の施設が残っているのを見たのは初めてである。取り壊すにはすでにコストがかかりすぎるのであろう、静かにヤマへ同化するのを人は見守るのみである。
 しかしながら、マインパークを見慣れた我々にとっても、この情景は強烈な印象となった。それは、こうした景観は滅多に見られるものではないから、というよりも、厳しいばかりの無情感を持ってしまうのだ。わずか25年前は、これらは、活力の象徴であったに違いない。しかし、破壊の活力もまた創造の表現である以上、ただ拘置されているだけの水泡は破壊も再生も封じられている。そこに残るのは絶望であり、無情である。この印象が施設全体景観を支配しているのが、ここのようにレジャーコンセプトを発揮したい場合にはつらい点であろうと思う。
人の第一印象はかなり強烈である。これを大事にすることがリピートに大きく影響するのは言うまでもない。
 なお、アプローチにおける先程の交差点だが、クルマを走らせてみると、我々が進んだ道の方がアクセスとしては「表」であった。それなりに道幅があり、カーブも抑えられ、運転しやすい。一方、交差点で下を選んだ場合だが、実はこれが本来のアプローチであったことがわかる。舗装状態はあまりよくないし、カーブも多く、巨木の緑が覆い被さるような場所もある。それでも、道が開けて最初に眼に入ってくるのは鉱山の遺構であり、“マインパークに来たんだ”というインパクトがある。実は現在でも工場の一部でボーリング業者が営業しているようで、そこへの営業車両のアクセスとして使用したいらしく、一般は先程の上からの道を通るように(公式にはそうは書いていないが)配慮したのであろう。しかし、アクセスからすでにマインパーク体験を演出すべきという観点から、この“旧道”の利用をお勧めしたい。従って、国道から例の分岐点にかけて、「大型バス、大型セダンは↑」「狭いが昔からのアクセスは↓」のような情報提供サイン看板を多数設置して、ルート案内を兼ねたマインド訴求を展開してはどうだろう。



次ページ 4.訪問してのインプレッション(1)