事業概要

 同村には四国各地から移築された民家31棟が、当時の姿に復元され、保存されている。江戸時代に建てられたものから、最近まで利用されていたものまでさまざまである。うち、国指定の重要文化財が8棟、県指定の有形文化財が3棟、高松市指定の有形文化財が6棟、文化庁の文化財登録が灯籠なども含め27件となっていて、いかに重要かつ価値の高い民家が多いのかがおわかりだろう。

 実は、同村の運営は公共のようだが、そうではない。現在の運営主体は財団法人の形を取っているが、主体はカトーレック株式会社(旧加藤陸運、本社高松市)で、昭和51年にオープンさせた。そのエピソードは興味深い。加藤陸運の社長は、定年退職した従業員の再雇用先として、うどん屋の経営を始められたそうだ。その店舗に、江戸時代末期に立てられた藁葺きの農家を移築したところ、味はもちろんのこと、店構えが評判を呼び、大人気となった。現在も同村の駐車場と隣接してその店「わら家」は営業している。(「わら家」のレポートを参照) 深い森の中に民家が点在する

 うどん屋の店舗に古い民家を利用する、というアイデアを発想した社長の行動はそこで留まらなかった。あるとき、絵画の購入を検討されていたが、「この絵画は自分が買わなくても他の誰かが買うだろう。しかし、古い民家は自分が買わなければ、たとえ価値があるものでもいずれ朽ちてしまうだろう」と考えられた(購入を検討していた絵画と、候補に挙がっていた民家の価格がほぼ同額だったそうだ)。建造物の移築には通常かなり高額のコストがかかるものだが、うまいことに、陸運業なら自社で移築ができてコストもそれほどかからない。
 こうして四国各地の民家や建造物の収集が始まり、四国村を開村するに至ったのである。当初はここ、屋島にもとからあった私有地で開村したが、後に払い下げの国有林を入手して敷地を拡大、現在約51,000平方メートル(東京ドームの1.1倍、つまりほぼ同じ)となった。社長の趣味、そして美学が凝縮した結果と言ってもよいだろう。

 民家の展示の他には、さまざまなイベントが行われている。ワークショップでは、今までに「陶芸教室」、“だるまおとし”や“独楽”などを作って遊ぶ「手作りふるさと遊び」、「季節の料理教室」などの体験イベントが開催され、特に人気の高い「陶芸教室」は月1回開催されている。子供でも参加できるプログラムが揃っており、学校から遠足の一環として訪れるケースも多いそうで、事実、我々の訪問日も小学校高学年と見られる子供たちの団体を見ることができた。
 年末年始には、「しめ縄作り」、「餅つき」、「振舞酒」、「どんど焼き」など、盛りだくさんのイベントが予定されている。
料理教室の様子(四国村ホームページより)

 さらに、村内にある農村歌舞伎の舞台「玉藻座」では、「春はこんぴら、夏は屋島」と言われるほど、すっかり四国の風物詩となった「屋島篝火歌舞伎」や「子供歌舞伎」のほかに、クラシックやポップスの野外コンサートも行われている。
異人館では毎月サロンコンサートを開催、また秋には音楽を聴きながら中秋の名月を鑑賞する「観月会」が開催されるなど、非常に充実した活動を続けている。
 同村のスタッフは5人で、うちひとりが学芸員資格を持っている。他にパートのスタッフ3人が受付業務を行っているとのことである。
 お話を一通り伺った後、さっそく村内を回ることにした。以下、印象に残った建造物、演出などをご紹介する。


秋に行われたイベントのチラシ

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