●華の浮世絵館

 外観が武家屋敷の「華の浮世絵館」は、ソニーとNHKが手がけている。映画監督・篠田正浩氏が制作した映像作品を使い、“ジャポニズムの原点である浮世絵を通して日本の文化のすばらしさを伝える館”である。
 作品は、浮世絵に興味を持ったゴッホの視点を中心にその世界を描く約20分の短編だが、興味深く見ることができる。シアターの外は浮世絵を紹介する資料を展示しており、浮世絵の変遷、「歌麿」「北斎」などの紹介、「彫り」「刷り」などの工程、当時の高度な専門技術についてのパネルなどがあった。浮世絵をそれほど知らない人でも、興味が持てるよう、充実した内容をコンパクトにまとめていた。アミューズメントを求める来場者にとってはテーマが堅いせいか、それほどの人気ではないようだ。

●エレキ樽探検館

 「エレキ樽探検館」は三菱電機提供の展示館。ここが唯一アトラクション要素の強い建物である。アトラクションゆえ、身長100センチ未満の子供は入場できない。テーマは“平賀源内が操縦する潜水艦で海底探検が楽しめるライド型シアター”で、常に行列ができるほどの人気である。当日も閉館近くというのに、既に行列でが、次の番を待っている。その間、モニターテレビで、キャラクターの平賀源内が登場して、ゲームの解説を始める。それによるとこれから乗り込む潜水艦は、変わり者で発明好きの平賀源内氏ご本人が樽を改造して作ったものだそうで、かなりポンコツである。
 さて、シアターに入る着席すると、シートベルトを締める。空間は木造ボートの後ろ半分がデザインされている。これはけっこう揺れるのだろうな、と思っていたが、想像以上にブンブン振り回され、腰が痛いくらいだった。






  エレキ樽探検館シアター前の
   モニター

 ストーリーだが、海底に沈んでいる船の中には宝物があって、それを“エレキ樽”に乗って発掘・回収に行くのである。渦に巻き込まれたり、大きな魚や岩にぶつかりそうになったり、沈没船の中からガイコツが現れたりすると、ストーリーと同調して座席も大揺れとなる。そうした大変な思いをしながら、お宝を発見するのだが、大きな渦に巻き込まれて引き返すことに。“ふう、助かった、しかしもう少しだったのに残念じゃった”というところで終了・・・率直に言ってがっかりさせられた。江戸と、そして平賀源内に関連する事柄が全く登場しない。最初は江戸のお堀から入って大川=隅田川に向かい、途中にカッパがいたりで時代風情を感じられるのだが、あとがいけない。沈没船も洋風だし、お宝も宝箱に入っている金貨や宝石で、海賊が出てくる漫画に登場するような、いかにも西洋風である。自由度が高いアニメーションを使っているのだから、時代や歴史を絡めたような内容がなぜ作れなかったのか、と残念である。平賀源内を登場させた意味もないし、「エレキ樽」は「エレキテル」とかけた単なるシャレでしかない。園内にお遊び的要素を取り入れたかったという意図だけが伝わってくる展示館だった。ところでここも「展示館」なんだろうか・・・何も展示していなかったけど。

●江戸妖怪館

 ここも遊園地的要素の強そうな雰囲気であるが、“学術的”に妖怪の生態が学べて、なかなか面白かった。「江戸妖怪館」は“日本初の妖怪ミュージアム。江戸に生きた妖怪たちに会いに来てね”というのがキャッチフレーズである。手がけたのは大日本印刷と松下電器産業である。
 エントランスは円形のホールになっていて、モニターに映った妖怪たちにぐるりと囲まれる。緑の照明の中に青くぼうっと映し出される妖怪たちはみな不気味だが、どこかコケティッシュな風貌である。ここに登場するのは「ゲゲケの鬼太郎」の作者、水木しげる氏が描いた妖怪たちなのである。


入館料売り場
 中に進むと、江戸に棲息していた妖怪たちにたくさん会える。妖怪のイラストの下に、どこに出没し、どんな行動をするのか解説がある。独特の風貌と不思議な行動につい引き込まれる。
 我々に最もウケたのは「江戸妖怪年表」である。何年にどんな妖怪が表れて何をしたのかが一目瞭然である。「15○△年 おいてけぼりが△□橋にあらわれ、人々を驚かせた」等、なじみの妖怪のルーツがわかって興味深い。なかには、「16○△年 □○が飼っていた馬のしりこたまがひっこ抜かれる」なんていうシャレが利いたエピソードも加えられている。
 水木しげる氏は、本当に妖怪の存在を信じており、徹底した研究を重ねている。その語り部としての選択が漫画というメディアの選択で、翻訳が鬼太郎なのだろう。氏の熱意があるからこそ、馬鹿馬鹿しさより感動が先行するのである。

 マルチメディア技術をアピールするのは、自分の顔をデジタルカメラで撮って、妖怪の如く歪ませて壁に映すことができるコーナーである。若者3人組が楽しそうに遊んでいるのを見たが、その中の一人の女の子の顔がひどい顔に歪んでいて、あとの二人は大笑い。当人も「うわーっヤダー!」と大騒ぎ。私も衝動に駆られたが、恥ずかしいし、当分空きそうにないのでここは別の機会に譲ることにした。

●黄門漫遊館

  「水戸光圀公の逸話をもとにクイズに答えてあなたの性格を診断」する展示館。最初は何のことだかさっぱり見当が付かなかった。入口で係員の女性から白いA4大のパネルを渡されて中に進む。さっそくクイズがモニターに出題され、A・Bのどちらかを選択する。選んだ記号を示す位置に進むと、上からスポットライトが当たられ、その下に立ちパネルにスポットの光が当たるようにすると、そこに次のクイズの設問が映し出される。そしてその回答の番号に従ってまた次の位置へ進むのである。

 クイズの内容といえば、「水戸光圀公は人を酒席に招いてもてなすのが好きでした。さて、あなたが家に友達を招待するとしたらどちら?A.自分で料理を作ってもてなす B.おいしいと評判の料理屋から取り寄せる」といったもの。音声でもクイズを言ってくれるが、すぐそばから他のクイズの音声も聞こえるため聞き取りにくい。しかも4問目はシステムの調子が悪く、クイズが映し出されなくなっていた。係員の女性がすぐに来てくれて、「申し訳ありません、音を聞いて回答してください」と音声のクイズをリピートしてくれた。
 全てに答え終わり、渡されていたパネルを持って診断コーナーへ。そこには数台のモニターの付いた端末があり、下の部分にパネルを入れる口がある。そこに自分のパネルを入れるとモニターに診断結果が表示される仕組みである。つまり、このパネルにデータが記憶されているわけだ。映し出されなくなっていた4問目の結果は反映されているのだろうか、少し気になったが、係員の女性の「ではこちらにお進みください」という誘導から見て、別に問題ないようである。で、その診断結果は・・・ごめんなさい、思い出せません・・・確か、“正義感の強いあなたは「岡っ引き」”といったような内容だったと思うのですが・・・。それにしても、がっかりする結末である。

 水戸光圀公を絡めたクイズという着眼は、時代性・立地からしても支持すべきで、パネルにクイズを映すというアイデアも面白い。でも、あと一歩ひねりが欲しい。子供向けのクイズと言っても、幼年代とその父母向けの水準だろう。設問数も少なく、結果もチープ。我々は全く並ばずに入館したからまだよかったが、もし混雑時に並んで入って(しかも有料)この内容だったら、かなりがっかりする人が多数を占めると思うのだが。
 ちなみに、ここを手がけたのはテレビ番組「水戸黄門」のスポンサーの松下電器産業。NHKに配慮しすぎたのであろうか。

次へ

ライン


トップ