芝居小屋の現在 八千代座レポート(3)

4.運営

 昭和55年に所有が八千代座組合から山鹿市に移され、その後は市が一括して経営を行っている。実際の運営は市の外郭団体である財団法人地域振興公社のスタッフが行う。見学客に対して案内係や芝居の準備をする裏方のスタッフもすべて地域振興公社の方々である。
 八千代座の運営は見学と貸し館の二本立てである。メインは文化財の公開であり、見学者を増やすことに力を入れたいそうだが、改修が終わったばかりで注目度が高いためか、貸し館の予約が目白押しである。実は八千代座は冷暖房がない。そのため、夏の予約が少ない代わりに、秋の申し込みが大変多いという。週末はほとんど毎週のように催し物が行われているが、それには地元のカラオケサークルなども含まれている。また、2001年度は市の自主事業の催しが4本あって、ひっきりなしに何かが行われているという状況である。そのため見学が少なくならざるをえないことから、2002年度は市の催し物は1〜2本に抑え、貸し館と見学を中心に運営を行っていくことにしている。
 ちなみに見学料は大人500円、小中学生250円。以前は無料にしていたが、復元工事終了後から有料となった。新しく生まれ変わり、無料というのもいかがなものか、ということになったらしい。

 さきほども少し触れたが、八千代座には空調がない。冷暖房により木材を痛めてしまう可能性があるという理由にも増して、冷暖房完備の施設では一般のホールとは何ら変わりがなくなってしまうという判断から設置は見送られた。今後少なくとも100年は改修工事が行われないと思われるので、空調も100年間は付くことはないだろう、とのことである。

 入場者数は一般公開を開始した平成元年から大改修の始まる平成8年まで、ずっと右肩上がりで増えて続け、最も多い年には4万5,000人ほどだった。大改修後の今年は6万人を見込んでおり、ほぼ予定通りか、少し上回るほどになる見込みだという。もちろん、貸し館の際には見学ができないため、右肩上がりになる可能性は小さいだろう。

 地域アイデンティティをシンボライズする空間、という位置づけにおいては、山鹿の全国的に有名な「山鹿灯籠祭り」の活用がある。これは女性だけによる「千人灯籠踊り」がメインとなるのだが、この踊りを八千代座の常設公演として見せてはどうか、という提案がよく出るそうだ。現在は観光協会の主催で毎年9・10月の毎週土曜日の夜に灯籠踊りなどを山鹿温泉の宿泊客向けに演じており、一晩で500人以上が訪れる日もあったほど好評だそうだ。これには温泉宿泊客は観覧無料という理由もあるだろう。そこで年間通して行いたい、との発想は当然なのだが、出演している保存会の女性は基本的に全員独身で、仕事を持っていたり、熊本市内のホテルなど他からの出演依頼もこなしたりと多忙のため、残念なことに通年での開催は難しい状況だという。

山鹿灯籠祭り
(山鹿市ホームページより)


5.夢小蔵

 八千代座の斜め向かいに併設されている「夢小蔵」は八千代座管理資料館である。もとは豊前街道沿いにあった商家の敷地内にあった土蔵を移設して資料館として再生した。建設されたのは八千代座よりも古く、明治20年である。開館したのは平成4年だが、資料館を訪れる人は少なかったので、八千代座の大改修後は両施設を併せた見学料を設定したそうだ。
 「夢小蔵」には八千代座の芝居に使われていた200点以上もの小道具のほか、映写機、興行のチラシなどが展示されている。また、板東玉三郎が公演で着用した衣装も展示されている。

八千代座に併設している夢小蔵

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