夕張・石炭の歴史村(12)

5.訪れてのインプレッション(3)

(2)石炭博物館

○炭鉱の作業を表す展示機器類は陳腐化が残念

 次のコーナーは「これが炭鉱だ」。炭鉱の全貌を写真パネル、模型、実際に当時使っていた道具によって再現を試みている。
「炭鉱のようす」と題した壁面に設置された立体模型は、炭鉱の作業の流れを炭鉱施設の模型により説明する。付属のスイッチを押すとその場所にランプがともる基本的な展示方法だが、そのスイッチは炭鉱で当時使われていたもののように古く、錆びていた。これは「選炭のしごと」パネルのスイッチも同様で、真相は不明であるがもしそうであれば、その解説があると、その当時の機器類がまだ現役で作動するリアリティに感動するのだが・・・。

 展示パネルは、壁面はもとより、スペースの中央部にパーテーションを兼ねるようにレイアウトして、展示ボリュームを確保している。たぶん見る順番は任意だろうが、見忘れがないように順序立てたい自分のようなタイプだと、内容の前後に混乱して頭の中に内容が入ってこない。
 これまで時系列展示のような、展示手法に一貫性を持たせるか、動線を明示する、またはスペースを限定する等の工夫が欲しい。
 「炭鉱マンの一日」と題された壁一面の写真コラージュ展示は説明なしの単純な手法であるが、解説を加えて整然とて並べるより、炭鉱の厳しさがよく伝わってきる。
 このコーナーの最後は、炭鉱の暮らしで実際に使っていた、石炭を燃料とするメだるまストーブモをはじめ、生活用品を展示している。年配の方は懐かしいのであろうが、年代的に筆者は映画やTVでしか見たことがなく、非常に珍しかった。

○人形を使った情景展示で「友子制度」を解説

 次のコーナーは、「友子(ともこ)制度」における「取立式」の模様を、人形を使って再現している。先にも注釈しているが、「友子制度」とは、簡単にいうと、親分?子分の任侠的関係により封建的な監視体制を確立する一方、相互扶助を行う制度である。その“兄弟、親子の杯”的な加盟式を再現しているのである。しかし、そこの説明パネルを読まないと全くわからない。また、一般には理解しにくい内容である。この制度は、切った・張ったのヤクザの世界そのものだったとも言われている。また、夕張炭鉱で幼少を過ごした人にとって、共同浴場で入れ墨を見るのは日常的であったという。このような陰の部分を敢えて展示・説明していることは評価するが、表現が専門書的過ぎるのが残念である。

 コーナーの中央には、平台に様々な種類の「支保」の模型が展示されている。この「支保」とは、地下空洞を形成する場合、崩れないように支えるものである。ここに展示してあるのは、明治・大正まで使われていた木製の「支保」で、模型の材料も同じように木製で非常にリアルである。
 その他、昔の手掘り用工具から、現在も使われている宇宙服のような最新の作業服まで、炭鉱に関する道具類を多数展示してあった。



パーテーションを思わせるパネル展示


迫力ある「炭鉱マンの1日」の写真コラージュ


「取立式」の様子を人形で再現


坑道の補強「支保」のバリエーションは多い


最新の宇宙服のような作業服

○地下1,000mを演出したエレベーターで地下展示へ

 2階の展示コーナーから出ると、そこは小さなホールで、『燃える石 石炭特別販売200円』と書いた看板が設置されたお土産店があるが、シャッターは閉まっている。取材時はシーズンオフの平日ゆえに休みだろう思った瞬間、電光石火、1階のお土産販売タイミングの意図がわかった。要するに、2階の店をオープンさせると、少なくとも人員を1人は配置しなければならない。そこで閑散期は効率化のため、このお土産店は休店し、受付に販売を担当させていたわけだ。コスト削減のための苦肉の策だが、やはりどちらにしろお土産は最後に買うもの=途中だと荷物になるだけという観光客心理が反映されていない。
 案内板通りに先へ進むと、ケージ(エレベーター)乗り場に到着。早速乗り込んで坑道へ向かう。
坑道は、地下1,000mの想定している。ケージの中では、扉が閉まると、高速で落下していくような効果音が鳴り響き、照明が消え、下から上へ速いスピードで流れる照明効果も加えて雰囲気を盛り上げる。また扉上の30階分ほどの階層表示板も流れるように次々と右へ移動する。実際は建物3階分の降下なのだが、本当に1,000mの地下へ下りているようで演出の狙いは正解であった。
 到着してケージを下りると、高さ・幅約5mの大きなトンネルが続く。これは実際の坑道ではく、新たに造った模擬坑道。その中を3ゾーンで構成している。


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