夕張・石炭の歴史村(15)

6.活性化のために

○マインパークとは違い、総合レジャーランド訴求

 
鉱山跡を集客施設化したマインパークの多くは、観光坑道の体験を目玉に、(そのほとんどが鉱山の歴史や技術、文化などの学習要素を入れたもの)、集客のフックとして別のアミューズメント施設やイベント(砂金採り体験、地元名産品の手作り体験)、そして地元リピーター確保に温浴施設を設置するというのが基本パターンになりつつある。もちろん、「マインランド別子」(愛媛県)のように、手つかずの遺構を管理保存して観光資源化するなど、まず“鉱山”がありきという施設もある。対して歴史村は、全体施設ネーミングこそ“石炭”とあるが、実態は総合レジャーランドであり、石炭は「石炭博物館」に限定される。
 そして村の役割は、炭鉱の町から観光都市へ脱皮しようとする夕張市のシンボルであり続けること、さらに収益源として継続することにある。それは容易ではない。市場規模が限られている北海道では、本州以西の観光客誘致と道内リピート客の確保が必須となる。
 そこで、歴史村は、それほどリピートポテンシャルが高くないマインパーク的なアピールを薄めて、村内にはアミューズメント&プール施設、周辺には「めろん城」、約30haという広大な敷地に、季節の花が約12万本植栽された大規模花園「花とシネマのドリームランド」を設置、さらにキャラクターショーまで開催して、動員を図っていこうとて動員してきた。

○フルスペック&大規模な施設によって集客アピール

 炭鉱をテーマとする博物館等の他は、付帯施設的な中途半端なものではく、例えばアミューズメント施設では遊園地とがフルスペックのアトラクションを用意しており、これ単体でも集客施設として成立する(単体利用可能)。
 こうした本格的集客マシンも、場所柄半分以上が冬季は休業となる。そうなると通年営業の「石炭博物館」をはじめとする展示博物館系の充実は不可欠なのである。「郷愁の丘ミュージアム」のオープンは、このあたりの充実にあった。

○「石炭」「炭鉱」に触れないことは当事者の自虐発想

 北海道空知支庁では、空知地区の炭鉱遺産を観光資源としてPRするために、「そらち・炭鉱(やま)の記憶マップ」を作成している。

 夕張市は、「おもしろガイドブック」というカラー印刷で26ページの立派な総合観光ガイドを作成している。最初のページで「観」「食」「遊」「泊」の括りで夕張を紹介しているが、遺構のこと、炭鉱のことには一切触れていない。さらに、冊子の中で歴史村に4ページ割いていながら、「夕張史跡めぐり」の2ページでは「幸福の黄色いハンカチ広場」に1ページ、もう1ページに「めろん観光農園」「北海道物産センター」「夕張メロンドーム」などと一緒に、5?6カ所の遺構を収録する程度に終わっている。
 また、赤平市、美唄市、歌志内市、三笠市が、空知支庁の「そらち・炭鉱の記憶」をさらに詳細な各地区版としてそれぞれ編集した「ポケットガイド」もいただいたが、ここでも夕張市版はなかった。
 つまり夕張市は“炭鉱”“遺構”を活用した観光には積極的ではないように見える。それでも地域を語るときに炭鉱を避けて通ることはできない。炭鉱、遺構に関係のない施設がほとんどであるにもかかわらず「石炭の歴史村」となっているのである。




「おもしろガイドブック」


空知支庁発行分をベースに各自治体が独自に作成


○改善が欲しい土産と照明

 「石炭博物館」では、エントランスホールの映像により予備知識をつけるところから始まり、真っ暗な模擬坑道で終わるまで、理解しやすく、楽しく学習できるように、ストーリーと展示・説明方法が非常によく考えられている。改善していただきたい点は、インプレッションでも記したが、次の2点である。

(1)お土産に限定商品を加え、出口で販売する
 歴史村内には「物産館」があり、ここが“土産センター”機能を果たしている。しかし『石炭博物館』として売上を伸ばしたいのであれば、“ここだけ限定販売”というプレミアをつけた土産品を販売する方法がある。そして、見学の最後に販売店があるのが望ましい。
 現在、見学の最後は屋外の坑道出口となっており、キャップライトを回収する「炭鉱生活館」内の位置が妥当ということになる。ここもまたスペース的に厳しいのであれば、キャップライト回収と併用で、出口横にお土産販売施設を造って、黒飴を含めたオリジナルのお土産(例えば、安全灯やキャップライトをはじめとする炭鉱用具のキーホルダー&ストラップ、石炭灰を使った陶器などの商品・・・etc)を品揃えしてはどうだろう。

(2)模擬坑道の説明ボードは判読可能にする
 「まっくら探検」であるから、施設内の照明は暗いのが当然が、問題は説明ボードを見ようとする時に“点”で照射され、文字が見えないことである。キャップライトのレンズを広角用に変更すれば簡単なことだが、多人数で点灯すると全体が明るくなりすぎて、真っ暗にはなりそうにもない。やはり、バックライト付きの説明ボード、またはボード自体に小さな照明を付けることがベストであろう。


空知支庁発行の「そらち・炭鉱の記憶マップ」


●入場料金(2002年)
種類 大人(中学生以上) 小人(4才〜小学生) 備考
総合パスポート 3,000円 2,200円 すべて共通
施設パスポート 1,500円 1,100円 石炭博物館、炭鉱生活館、化石のいろいろ展示館、ロボット大科学館、SL館のみ共通
遊園パスポート 2,000円 1,800円 アミューズメントのみ
冬季施設パスポート 1,000円 800円 休業施設以外



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