〜リバーウォーク北九州 レポート(4)〜 4.集客 ○現況 商業施設「DECO CITY」のターゲットは基本的には全ての性別・年代としている。というのも商圏がさほど広くないため、全方位的な集客を目指す必要があるためだ。コアはF1・2、M1・2と言われるローティーン・ハイティーンである。この層はファッションマーケットの牽引役であるため、ファッション専門店事業はどうしてもティーンエイジャーを中心とした若い層を攻めていくことになる。その上、都心部立地とはいえ、小倉駅からは離れており、この先にはわざわざ人が行くような目的となる施設や場所がない、いわゆる"エッジ"の部分にあたる。そのため、この距離感に抵抗の少ない元気な若者層をターゲットに据える必要があった。そして競合には抜けている少し上の年代をもうひとつのコアに据えて、幅広いMDを実現したいと考えている。 |
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○商圏 北九州市全般と山口県下関エリアを想定している。他の地域から誘客することも当然必要だが、それよりも福岡市への流出をいかに食い止め、地元で買い物をしてもらえるかを勝負どころとしている。一方、九州の広域エリアからの誘客は、福岡市の吸引力にはそう簡単に太刀打ちできるものではない。そこで、九州よりも下関エリアからの集客に期待している。下関もここ数年商業施設が増えてきているが、北九州をスルーして福岡市に入っていた層を取り込めればと考えている。 福岡には面的なおもしろさがあり、拠点としての充実がやっと進み始めた北九州とは魅力が違うという。そのため、近々小倉そごう跡地に進出する伊勢丹に対しても、競合としての意識よりも面的魅力の充実が図られるため、かえって歓迎しているとのことである。 最寄り駅のJR西小倉駅は、リバーウォーク北九州がオープンする前は各駅停車のみ停車する駅だった。オープンに先立ち、JR九州に働きかけて、快速電車も停車することとなった。それにより、人の流れも変わったという。また、地下にダイエーのスーパーマーケットが出店しているため、生鮮などデイリーの買い物客の取り込みも可能となっている。 平日と休日では休日のほうが広域から集客があり、来場者数は多い。 |
エナジーコートの噴水。1日数回、水が音楽とシンクロして見事な動きを見せる。 噴水を楽しそうに見入る子どもたち |
○DECOクラブカード ポイントカード「DECOクラブカード」は、エフ・ジェイ都市開発にとって初めて直接手がけるテナントビジネスであるため、顧客のレスポンスを明確に掴むために、消費者の声を拾う仕組み・ツールとして導入した。 ポイントは、「DECO CITY」と「FOOD PAO」での買い物で貯まる。また、カードを提示するとシネコン「T・JOY」の映画が大人200円・学生100円割引となるほか、デコシティ内の店舗での優待サービスなども受けられる。ただしダイエー直営のスーパーマーケット「グルメシティ」はポイント対象外である。 |
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入会金・年会費は無料。ポイント還元率は1%となっている。会員数は2003年8月時点で約3万人。会員は"南は沖縄、北は北海道"とのことだが、これはオープンがゴールデンウィーク中で観光客が多かったことに加え、入会時にキャンペーンで買い物券をプレゼントしていたので、ここを訪れた人がこぞって入会したためと見ている。実稼働しているのはやはり北九州市内および山口県の会員が中心である。会員数の目標は特に設定していない。 会員向けの情報発信は、定期的な会員誌・DMよりも、バーゲンなど催事の際に集中させている。 |
「DECOクラブカード」入会受付カウンター |
○広告宣伝 基本的にはマス媒体が中心である。リバーウォーク北九州の情報には、イベント、DECOシティ、劇場の演目、美術館の展示内容、NHKのイベントなどと多岐にわたる。全てをフォローすると、ターゲットを絞ったメディアでは到達率が低くなる。そこで、幅広い層に対応した新聞広告を中心に、テレビのパブリシティを実施している。 ○ネットの活用 「DECO CITYメール会員」制度を設けている。週に一度、デコシティ最新情報をメールマガジンで発信。メール会員限定のプレゼントやサービスを用意している。「メールクーポン」はプリントアウトして該当の店舗に持参すると割引やプレゼントがあるというもの。携帯電話で申し込んだ会員は携帯メールに届いたクーポンを画面に表示して店舗で見せれば該当のサービスが受けられる。入会者には「DECOペン」とネーミングされたオリジナルグッズの筆記具がもらえる。これは送付せず館内のコーナーで受け渡す仕組みをとっている。 |
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同館を特集した「リビング北九州」。オープン時に新聞折り込みなどで配布。 |
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○地域と一体となった活動 周辺地域・商店街との連携は表だったものはない。ただ、開発事業の前提でもあった「紫川マイタウン・マイリバー整備計画」を推進してきた、周辺商店街などで結成される「紫川マイタウンの会」に参加し、リバーウォークの前を流れる川でボートイベントや貸しボート、掛かっている橋の上でパラソルショップを開くなど、周辺と連携したイベントや企画などの試みを続けている。 小倉の夏と言えば、毎年7月第3金土日曜日の「小倉祇園太鼓」、8月の第1土日の「わっしょい100万夏祭り」が有名だ。特に「わっしょい」の方は行政主体の大がかりな祭りである。小倉城にも会場を設置し、そこから山車を引いて街中を回るという。近隣で開催される祭であれば当然リバーウォークとしても参加・連携を考えていた。だがここ数年、これはここに限らず全国的な傾向だが、祭りの際に治安が悪く思わぬ方向となっており、参加の旨を打診した際に主催者からしばらくは静観してほしいとの意向があったという。 参加には直接参加はできない形となってが、伝統芸能である「祇園太鼓」のチームを招いて館内で演奏してもらうなどの活動はしている。 このように、スタンスはあくまで「競争」ではなく「共存」である。駅前には駅前のにぎわいの核が、他の場所には他の楽しみがそれぞれあり、人々が町の中を歩き回ること、それ自体が町の活力になるからである。 編集部 池上 取材:2003年8月6日 |
NHK側(紫川側)外観 川沿いを汽車がのんびりと走る |
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