8.上屋の設置で展示車両の老朽化を防止すべき

 「佐久間レールパーク」のような鉄道博物館を訪ねて、まず思うのは、静態展示を目玉とし続ける以上、仮設でも何でもいい、消防法で許される限り、屋根を付けて欲しい。展示館建設の際に展示車両は化粧直しを施したのだろうが、もともと古い車両。風雨による腐食は予想以上に進んでいる。
 例えば、実際に車内に入れるオハ35形客車だが、窓枠に使っている木材はすでに限界を超えている。手荒く扱うと、割れてしまいそうだ。その他の展示車でも錆で塗装が浮き上がっている病状が少なからず見受けられる。定期的に丁寧に手を入れられれば理想なのだろうが、それほどメンテナンスフィーは容認されていないだろう。ゆえに、イニシャルは必要でも風雨をしのげる設備を付ければ結果的にコストダウンにつながるのではないか。それに、展示物を大事にする、という事業者の基本姿勢への信頼も醸成できる。
 とにかく、鉄道に興味にない人(つまり保護者・つき合いで入館した人)は、汚れと劣化によって、第一印象は「これスクラップ?」となってしまう公算が大きい。

写真11:塗装の汚れが目立つ展示車両
 一方、展示館内の鉄道資料類は、現状はただ並べて展示しているだけに等しい。時系列でまとめる、豊かな山の四季でグルーピングする等、いくらでも構成方法はある。資料を展示しました・保存しましたで満足せず、常識の殻を破って、飯田線の「駅」としてのドラマを再現して欲しい。
 繰り返すと、佐久間レールパークとは「鉄道の変遷を通じて佐久間町エリアの歴史と現在を認識する文化施設」であった。ここには新しい示唆がある。鉄道資料館に、動機はどうあれ「路線」に着目したテーマ・メイキングの可能性を見せてくれている。
 路線沿線のエピソードを鉄道とともに集約し、移動・発展のような切り口で構成、ドラマ化する。全ての路線が該当するわけではないが、鉄道の栄枯盛衰が街の発展とリンクしているような地域ではかなりのポテンシャルを発揮できるだろう。こう言うと行政的だが、コンセプト・メイクには路線各地から希望者を公募して、ワーク・ショップ形式で進めたいものだ。路線の各地にあるドラマを抽出して舞台化するのが理想なのだから。(安部)
 
 
*なお、上記レポートは当日の訪問インプレッション及びウェブサイト等の情報を加えて構成したものです。事実と異なる点があれば、ご一報下さい。訂正します。
*鉄道をテーマとする集客施設については、これからも取り上げて行く予定です。施設はもちろん計画の検証等、リクエストがあればお知らせ下さい。

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