マインランド 尾去沢(5)

4.訪問してのインプレッション

(2)施設のインプレッション
冬期は休業多く坑道のみ

2)観光坑道−2

○遺構を駆使した演出なのに浮いているマネキン

 坑道のプレゼンテーションの考え方は、以下の2点に代表される。

1)可能な限り当時をそのまま見てもらう

 その代表が坑道列車で、網の目のように敷設された線路がそのままの状態(一部歩きやすいようにとコンクリートで軌間を埋めているが)で置かれている。一部では、架線もそのままにされていた。また、坑道の分かれ目、すなわち“機関区”にあたる場所では、本物の電気機関車と掘削した鉱物を積載する貨車が、今にも動きそうな外観メンテナンスで、しかも長大編成の姿で置かれている。この規模と種類はマインパークナンバーワンと言ってよい。

2)情景展示により、直感的に訴求内容を理解してもらう

 例えば掘削用の工具を見ながら、その歴史や使用方法をアナウンスだけで聞いても、多くの人はピンと来ないだろう。そこで、マネキンを使って「実際にどう使っていたのか」「どのように動いていたのか」という情景展示を導入している。さらに、音声についても、単なるナレーションだけでなく、当時の録音に従うなどして、最盛期の鉱山に置ける仕事ぶりを可能な限り再現しようと努力している

○「八等身」マネキンはデパートで働こう

 ただし、残念なことに近代ゾーンのマネキンが小顔の8等身で、しかもみんな若く西洋系の美形ぞろいと来ている。
 一方、壁に展示された当時のドキュメント写真に写る人々はみな日本人。当然、仕事柄、作業着も肌も汚れ、無精ひげさえ生えている。
 この乖離はちょっと許容できなかった。このような展示方法は、施設運営者が本当に“マイン”を伝えたいのか、その姿勢を疑われる結果になるものと再認識すべきである。
 いますぐ、我々が良く知った日本人像、本当にここで再現したい情景で働いていた先達に作り直すべきだと思う。

(3)おみやげ館
金山をアイデアとしたオリジナル茶と日本酒


 思ったより坑道取材に時間がかかり、阿部課長代理へのインタビューが終わる頃、すでに売店は消灯していた。それでは土産品のレポートができぬと、ワガママを言って臨時に開店していただいた。

 おそらく地域のあちらこちらで流通しているのだろう多数の商品のなかに、同所のオリジナルとして、『金山御茶コ』(金箔入りコンブ茶)を見つけ、購入した(→)。これはコンブに金箔をまぶしたモノで、茶碗に入れてお湯を注ぐと、金箔入りのコンブ茶になる。これが結構おいしくて、編集部ではすぐになくなってしまった。

 そして、「金山奉行」。秋田の日本酒「千歳盛」に金箔を入れた酒である。金山だからパッケージの金色はわかりやすいとして、金箔入りというアイデアは買える。金箔入りの日本酒は、あるにはあるのだが、需要は正月かお祝い事の席だけで、あまり流通していない。大人にとって、砂金体験でいくばくかの砂金を手にするよりこちらの方が現実的でしょう。

 その他、地元鹿角の名産「南部せんべい」「大直利(くるみ餅)」、秋田の名産「稲庭うどん」「きりたんぽ」、親会社三菱マテリアルの鉱石類、お菓子類を販売していた。

“いい男”ぞろいの情景再現


石を積んだ長大編成のトロリー電車


実際に研磨や溶接の音、火花が飛び散る


「ちょんまげ坑道」のマネキンはきれいだが日本人


隠れキリシタンによって刻まれた十字架


金箔入り日本酒「金山奉行」


次ページ 5.再び、パイオニアとして