マインランド 尾去沢(6)

5.再び、パイオニアとして

○産業遺構探検に対して「拝観料」が必要


 取材の最後に、阿部氏から参考にと見せていただいた写真集、これは「日本の地下」というタイトルだったと思うが、ここに尾去沢の地下坑道がプロのカメラマンによって解釈された結果のモノクロ写真が納められていた。そして、他にも多数の炭鉱が収録されていた。
 この2001年冬、北海道釧路の太平洋炭坑が閉山して、日本から炭鉱山は消えてしまった。そして、炭鉱というビジネスの終焉とともに、そこに息づいていた町の繁栄も過去のものになりつつある。過去を現代に引き戻すために、マインパークは大きな期待を背負って登場したコンセプトであったが、そのもくろみは正直成功していない。
 ここ尾去沢にしても、集客施設という事業をいち早く導入し、未来創造に打って出た取り組みは、各地の鉱山事業所の跡地利用に関する教科書ともなったが、現段階では跡地活性化というよりも事業活性化に注力しているという印象である。
 なぜだろう?それは、モノクロ写真が示すように、実は現存する遺構はヤマに帰る、自然に戻るという再生産を継続しており、そのエネルギーは、景観から彩度を抜いてしまうような力がある。私たちが最初に受けた施設の全体景観の無情的な印象は、実は強力な大地のパワーによって、私たちが度肝を抜かれた結果であるようにも思う。
 同施設はもちろん、多くのマインパークは観光坑道体験をメイン訴求とする。これにアトラクションと飲食を加えてオカネを落としてもらおうという収益構造となっている。
 尾去沢に来て思うのは、ひょっとすると、これからは「拝観料」(他に適当な言葉が見つからないのだが)獲得のスキームを作るべきかもしれない。もちろんどこでもというわけではないが、大地の恵みを人工化した結果が再びその地に帰依する状態の景観エネルギーは、非常に感覚で個人的だが、インパクトは圧倒的である。快感を超えた感動体験、そんなイメージがわいてくる。

 願わくば、マインランド尾去沢だけの、このままの景観をずっと続けてもらいたい。廃墟となった人工物も含めた自然環境なのだから。




敷地内の遺跡群。整備にはコストが“かかりすぎて”廃墟のまま



※書籍「レジャーパークの最新動向2002」(2002年8月発行)の記事を掲載しています


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