展示車両は車内に入って座席に座りつり革につかまり、運転席にも自由に出入りが可能である(ちゃんとマスコン、ブレーキとも動かないがレバーが付いている)。活躍していた時代を感じるように、可能な限り、車内広告やサインを含めて当時のままに復元しようという努力は感じる。特に地下鉄の100型車両には、この電車がデビューしたころ、すなわち昭和32年・名古屋市営地下鉄開業当時のさまざまな関連エピソードが掲載された新聞記事を、『新聞で見る地下鉄の歴史』として、車内吊り広告の位置に時系列で掲示している。これと、展示コーナーに飾られた市電・地下鉄の歴史を追ったパネル展示のエピソードを読み比べていくと、名古屋人でなくても当地の市電・地下鉄を巡る都市交通の進展とその因果関係について大凡は理解できる。
 なお路面電車の方は、残念ながらインテリアは“工場出荷時”状態であり、製造年代順に展示車両を見たときに、床板からリノリウムへ、電灯から蛍光灯へ、木枠からスチール枠へといったインテリア構造の変化を検証できるに止まってしまう。
図8 地下鉄100型内の『新聞で見る地下鉄の歴史』




 さて、展示車を紹介しておこう。まずは路面電車=名古屋市電である。解説は同館の公式サイトを参照してほしい。
(1)1400型1421号  (2)2000型2017号 (3)3000型3003号  地下鉄車両は100型(107号車+108号車)その台車が展示されている。
 同サイトには、展示コーナープレーコーナーの解説もある。

 このプレーコーナーにひとこと。4台の名古屋地下鉄の「列車運転シミュレーター」はそれなりに完成度もあって楽しめるが、それにはテレビゲームの経験が問われそうだ。
 筆者のレベルはアーケードでの「電車でGo!」程度だが、このシミュレーターは、どうやってスタートして中断するのか理解するのに苦労した。もう少し簡単なインターフェイスの方が、この施設を目的訪問する世代に合致していないだろうか。それに、最新の高速地下鉄をアピールしたい交通局の気持ちもわからないではないが、「電車でGo!」の松山市内線バージョンが既に登場していることからして、いまはなき市電の操作を、当時の名古屋の都市風景を復元させて、運転のうまさよりも都市の変貌を再体験できるコンセプトとする方が、施設のありようと来場者満足につながるのではないか。無料ということもあり、これでは、休み中は子供で場荒れするのは火を見るより明らかだ(静かに展示を見たい人の神経を逆撫でする結果となる)。
 一方、このシミュレーターと一体に並べられている「資料検索システム」は、非常に良くできたデータベースであった。画面タッチのインターフェイスで敷居が低く、しかもデータがちゃんと整理されており、“検索したけど何もない”“やたら工事中”のような、人を馬鹿にした設計とは大違いであった。正直、プレーコーナーを減らして、これをもっと増やして、内容もさらに充実させてもらいたいと願うばかりである。

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