大分農業文化公園・「パークアルカディア」(2)


3.空間
 “発見”“参加”“癒し”
  3つのキーワードを設定


 同公園のコンセプトは、「出会いと収穫の体験フィールド」。豊かな自然のなかで農業・農村について、その文化を学習する場を提供して、その理解を深めると共に、新しい農業・農村の発信基地として位置づけている。そして、テーマは“発見”“参加”“癒し”の3つキーワードを設定して、対応する施設を配している。
 なお、キーワードとゾーニングは対応していない。どこでも「自然と親しめる」わけで、「農業を知る」ことが可能である。もちろん「農業で遊ぼう」と思えば本格的・専門的な施設で参加トライアルを可能としている。

(1)発見/「農業を知ろう」

 農産物の生産の場である農業・農村を、21世紀を担う子供達はもちろん一人でも多くの人に農業を理解してもらい、農業の大切さを知ってもらう。

■「豊の国物産館」:県内の加工グループ等によって生産された一村一品、地元の特産品、季節の花やオリジナル商品等が、お土産として購入できる。また、ソフトクリームなど乳製品や食品の製造・販売、各種ワインの展示・試飲・販売を行っている。
■「花昆虫館」:変化に富んだ雰囲気のある空間に、一年を通して四季折々の草花、鉢植えが栽培され、熱帯・亜熱帯の樹木や観葉植物などが鑑賞できる。また、国内外の珍しい蝶をはじめとした昆虫にも触れながら農業や自然との関わりを深く知るコーナーも設置。
■「薬草薬木の森」:百種類以上の薬草や薬木を栽培。その効用をじっくり知ると共に、ゆったりと鑑賞できる。
■「果樹園」:温室内にはポピュラーなナシ・ブドウ・ミカンなど様々な品種の他、日頃あまり目にすることのないチェリモヤ・マンゴーなども栽培。露地ではヤマグワ、ザクロ、ケンポナシ、グミなど素朴な果樹もある。
■「電動トラムカー」:環境に配慮したバッテリータイプの連結自動車(てんとう虫1号、2号)。定員は40名で湖畔の風景を満喫できる。

(2)参加/「農業で遊ぼう」

 生産されたモノを買うだけではなく、クラインガルテンなどで自らも植え付け、育て、収穫する楽しさを体験してもらう。また農業祭や各種イベントに参加し、遊びながら生産の喜びを知ってもらうと共に、都市と農村との交流を接客的に進めてもらう。

■「クラインガルテン」:1区画約40平方メートルの貸し農園を51区画設置。作物を育てることや収穫することの喜びを体験することができる。
■「研修館」:500人対応の大研究室・農業農村紹介コーナー・手作り工房・調理実習室・会議室などを完備。だれもが気軽に参加できる講演会、料理教室、体験講座などを開催している。

(3)癒し/「自然と親しもう」

 草花・昆虫・樹木・土等に触れ、生命観あふれる自然の息吹の中で、心も体もリフレッシュし、疲れた体を心ごと再生してもらう。

■「フラワーガーデン」:湖面に向かってスロープ状に展開する花園は、山並みをイメージ。チューリップ、ロベリアなど四季折々の露地花を観賞できる。
■「ハーブガーデン」:多種多彩なハーブが、ところ狭しと栽培されている。
■ 「コテージ」:冷暖房、シャワーを完備したロッジ風の宿泊施設を5棟設置。農場の自然に包まれた時間を肌で感じながら過ごすことができる。
■「オートキャンプ場」:クルマでそのまま乗り付けられるキャンプ場を30サイト設置。キャンプ用品のレンタルもあり。
■「ふれあい動物園」:国内外で見かけるヤギ、ヒツジ、アヒル、ウサギ、アイガモ、ウマなどと直接ふれあうことができる。
■「大型遊具」(コンビネーション遊具):
  プレイファームランド/農場にある道具の数々をモチーフにした遊具を設置
  風のリズム広場/オランダ風車を目印に、遊具を設置した広場
  レイクサイドキャッスル/絵本に描かれるような湖畔のお城をモチーフにした遊具を設置
■「レストラン館」/1階は山香産の大麦を使用した地ビールの製造工場と、新鮮な「山香牛」や山香米などを食材としたバーベキューレストラン。

 2階は安心院町(あじむまち)産の旬の食材を用いた和風レストランで、地元の味覚が楽しめる。

○農村の生活文化伝承を目的に、セミナー開催

 公園の果たす役割には、公園内の施設や設備を活用して、「農業・農村の文化情報の提供」を図りながら、「都市と農村との交流促進」の具体化も重要である。
 そこで、「都市と農村の交流促進」のために、まずは舞台の整備というわけで、同県別府市にあった『農村婦人の家』をここに移設して『大分県都市農村交流研修館』としてリニューアルオープンさせた。
 その上で、農村で育まれた生活技術の次代への伝承を目的に、知事が認定した“ふるさと生活技術一番さん”(認定数約200名)を講師に迎え、県下の農村・漁村の女性を対象に、定期的なセミナーを開いている。
 講座の設定では、農産加工基礎講座、野菜料理講座、おふくろの味伝承講座、留学生を交えて海外の家庭料理、材料から育てる草木染講座、陶芸講座、ふるさと技術伝承講座など、多岐に渡っている。

○集合住宅増加のため、大人気の「クラインガルデン」

 多種多様な施設が整備されたわけだが、最も人気があるのは、「クラインガルテン」で、すでに申込が区画数を超え、キャンセル待ちの状態にある。さらに、2001年度から契約を継続する割合が6割以上を占めている。
 契約者が自分の手で土に肥料を入れて育ててきた愛着や、秋に植えた春野菜の収穫に期待しての現象である。そうした契約者のプロフィールとして、マンションのような集合住宅暮らしが多く、コテージやオートキャンプの営業期間は、それらに泊まり込みで土いじりを楽しみ、収穫した農作物はバーベキュー等で味わうのがスタイルとなっている。


4.運営
 一般の知識を活用、地元雇用にも配慮


 事業体制だが、大分県が施設を整備し、県の外郭団体「社団法人大分県農業農村振興公社」へ管理運営を委託。さらに実務は公社の内部組織「大分農業文化公園管理事務所」が担当している。スタッフの内訳だが、県職員3名、プロパー2名、民間企業出向者(銀行、旅行)2名、契約職員20名の計27名で運営している。 
 公園内の植栽をはじめとする植物のメンテナンスは農協主催の人材活性化センター等にアウトソーシングして、地域の雇用に貢献している。またフラワーガーデンなどの草花の苗は地元(山香町、安心院町)の農家から仕入れて、地域の産業活性化に配慮している。
 公園の目玉でもある「花昆虫館」の実務運営は、地元の趣味サークル「大分昆虫同好会」所属の2名が設立した「有限会社EAO」(三宅武代表取締役)に委託している。豊富な専門知識で、同館の立ち上げ時から、標本展示から生体飼育までの監修に関わっている。
 ちなみに県庁の組織にあっては、公園は農政部農政企画課農業農村対策班、研修館は農政部営農指導課が担当となっている。
 レストラン、土産物屋はテナントとして入居。レストランは、公園が山香・安心院2町にまたがることから、山香町(山香牛と山香ビール)、安心院町(地元で採れる旬の食材を生かした和食)が1店ずつ出店している。


5.集客
  地元ファミリーが75%、
  平日に多い高年齢層のバス観光客


 年齢層は幅広い。中心は子供連れの家族客で、子供の約25%が、幼児・保育園児ということから、ヤングファミリー向けのイベントを実施している。2002年3月の春休みイベントは、「巨大迷路にチャレンジ」「フラワースタンプラリー」「シャボン玉を大空に飛ばそう」など。また、交流館で実施する体験講座についても、リーズナブルな参加料設定が好評である。

 また、平日に観光バスで来園する高年齢層が予想以上に多いという。そこで、こうしたお年寄りにもリピートしてもらえるような企画を思案中である。

 駐車場のクルマのナンバーで判断すると、大分県内が約75%、県外が25%。県外客は福岡がほとんどで、熊本、宮崎からの客は少ない。また、2001年は「北九州博覧祭」「山口きらら博」に北九州や山口方面客がとられた格好になったが、2002年からは回復すると見ている。



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