〜リバーウォーク北九州 レポート(3)〜 3.空間 ○施設構成 ショッピングモールの「DECO CITY(デコシティ)」、シネマコンプレックス「T・JOY」、ダイエーのスーパーマーケット「GOURMET CITY(グルメシティ)」、フードコート「FOOD PAO(フードパオ)、「北九州芸術劇場」「北九州市立美術館分館」「朝日新聞社 西部本社」「NHK 北九州放送局」の8施設から構成されている。(図参照) 図1 施設構成 ○デザイン デザインコンペにより、外国人デザイナーチーム「ザ・ジャーディ・パートナーシップ」を起用して作られた北九州リバーウォークの外観は、実際に見るときわめてオリジナリティにあふれるデザインとなっている。「ザ・ジャーディ・パートナーシップ」のジョン・ジャーディ氏はキャナルシティのほか、カレッタ汐留、ラ・チッタデッラ(シネチッタ川崎)、そして六本木ヒルズのデザインも手がける、日本の大規模商業施設デザインの牽引役ともいうべき世界的な建築家である。 南側(小倉城側)から見ると建物が複層的になっているが、北側から見ると都会的なすっきりとしたファサードとなっている。 外観(リーフレットより) |
|
また、ルーフガーデンに竹や大きな石を置くといった、景観の中に日本の自然を意識したモチーフを数多くデザインに取り入れているという。この点がキャナルシティとはニュアンスが大きく違うとのことである。というのも、キャナルシティのコンセプトは「都市の劇場」であるのに対し、ここは「街のオアシス」の位置づけとなっていて、施設そのもののあり方が異なっている。ここでの「オアシス」は単純に「休む」だけでなく、"ここで活力を吸収してまた外へ出て行く"という意味合いを持っている。 また、建物に彫刻的な要素を用いて、曲線を多用した特徴的な造形であるがゆえ、どうしても外観に目が奪われがちだが、館内も「人のスケールで場所を作っていく」という考え方により、細部にまで配慮。施設内のある地点を見た後に別のある地点を見ると、人はどのような気持ちになるか、視界と意識と印象の「つながり」の観点からデザインされている。 景観コンセプトは"新旧の融和、水と自然と建築、技術の融和"といった、ハーモニーである。同所を紹介する公式パンフレットに「新たな結合性を有するアイデンティティ」と紹介されているのだが、施設、小倉城、勝川公園の木々の緑、紫川が一体となった 景は、他にはどこにもないといっても過言ではないだろう。 施設全体の"グランドエントランス"は基本的にはない。ただ、施設の心臓部分は黄色の三角の付吹き抜け部分と規定している。ここから南側に目を転じると小倉城が見えるよう視界を向ける配置となっている。こうした独創的、印象的な外観を持つがゆえに、メンテナンスフィーが気になるところだが、オープンして間もない時点では、まだ検討中のプロセスであった。 |
ルーフガーデンにあしらわれた竹 ルーフガーデンから小倉城を眺める。 ミスティックコートの“三角の吹き抜け部分” |
○「DECO CITY」の運営・テナントシーリング 「DECO CITY」はファッションを中心に、雑貨・化粧品、飲食店など100店以上がテナントとして入居している。ファッションという変化の激しいカテゴリーが中心で、その時々の潮流をとらえて北九州のマーケットを牽引していくことは容易ではない。しかし、「小倉そごう」の撤退により、カバーしてきた市場分が"浮いていた"。これを他の商業施設がカバーしてきたことになるが、その全てを取り込めるはずもない。また北九州市内のマーケットではまだカバーし切れていなかったニーズも残っている。こうした"不動マーケット"を探り、そこに合致する層をターゲットに据えるべくテナントを揃えてきたという。 それは、ゼネラルチェーンによる出店のみに頼らず、他の商業施設との差別化をはかることを優先してテナントを結集させた結果が、フードコート「FOOD PAO」である。フードコートと聞くと、どこでも安心して、逆に言えば均一の味を提供するファーストフード店のモールイメージが強い。ここではできるだけ地元の名店、全国的な有名店など47店を集結させた。店内のカウンターなどでイートインも可能だが、テイクアウトして小倉城や川に面したテラスなどの"デザインされた環境"の中での食体験をアピールしている。 キャナルシティを手がけているエフ・ジェイ都市開発(株)にしても、これだけ大規模な商業施設を直接管理するのは初めての経験となった。キャナルシティの場合はテナントを揃えること、集客をはかることに注力し、テナントを統括する管理会社との折衝により業務を進めてきた。今回初めて商業施設を手がけることで、最も重要なオペレーションとして、「リバーウォーク北九州」と「DECO CITY」との棲み分けを掲げている。「リバーウォーク北九州」は朝日新聞社、NHKの業務施設のほか、芸術劇場、美術館も含まれる。そのため、たとえばバーゲンなどの際には「リバーウォーク北九州」のネーミングは使えない。あくまでも「DECO CITY」のバーゲンである。では消費者に「DECO CITY」のネーミングを浸透させるため、いかに訴求していくか、そのイメージ作りが必要になる。MDにより作り上げたテナントのラインナップと、同社が想定したターゲット層に速やかに情報を伝達し、イメージを作りあげていく取り組みを加速させている。 |
国道側から見た外観 「DECO CITY」 小倉城に面したテラス |
トップ |