6.民間企業の賢明な努力に脱帽

 ここの目玉はトロッコ列車ではないだろうか。列車に乗って、地底という異空間に移動する、というのは宮沢賢治以降、松本零士まで、日本人が大好きなテーマである。取材班全員が文句なく、素直に移動を楽しめた。

 実は、軌道は入抗後一度坂を上り、そこから下るという設計で、あれほど川のように流れ出ていた水が、終点の抗奥には全く流れてこないのも、説明がなければ不思議なシーンだ。しかも、この川の水量は、天気によって変わる。大雨が降った翌日は氾濫する勢いで、晴天が続くとおとなしい小川になってしまうという。自然の成す強いパワーをまざまざと目の当たりにできるわけだ。

 坑道内では採掘法、鉱石、坑道の規模、鉱員の苦労など、詳しい解説を運転手から聞きながら遺構を目で見て、体感することができる。このような工夫は、これまで訪れたマインパークにはなかったため、新鮮で素直に楽しむことができた。

 また、資料館も併設され、実際に坑道を体験した前後に見ることで、さらにリアリティが高まる。そしてお土産も、金鉱山ゆえの黄金グッズ、鉱物グッズにMDを統一するコンセプトによって、珍しさもあって納得して買ってしまう(実際、編集部でも「黄金茶」を買ってしまった)。もちろん、ご当地の一般的な土産も一通りは揃っていた。

 そして、温泉地としても知られる「磐梯熱海」という土地柄もあって、スパ施設をつくり、観光坑道と宴会をセットで売り出すなど、とにかく“集客”のために、さまざまな仕掛けを用意している。実は、「黄金湯」はこの取材後にオープンしたため、その効果のほどはわからないが、自治体や第3セクターにはない、民間企業の生き残りをかけた一生懸命さが伝わってくる。しかし、その必死な努力姿勢が、いつしかレジャー集客本位となって、事業の施設テーマである「観光坑道」の探検経験が付録になるなどの弊害にならなければ良いが・・・。

 全国の鉱山・炭鉱跡を見て回っているファンのホームページを見ると、高玉金山の選鉱所跡、煙突、ズリ山などが、観光坑道裏手の山に残っているという。実際の写真も掲載されているが、草木がうっそうと茂る中に、山の傾斜に沿って、巨大なコンクリートむき出しの洞窟が多数口をあけている様は、産業遺構の無常感を超えて、芸術的な感動すら覚える。個人的には、こういった非日常空間こそ公開すべきだと思う。ぜひこうした遺跡も、観光資源として活用できないのだろうか(最近流行の地域活性化策、撮影ロケ地としての誘致も使えそうだが・・・)。

 なお高玉金山をはじめ当サイトで取り上げた鉱山・炭鉱跡はもちろん、この他でも坑道以外の施設や建物などが現存している例があるという。こうした遺跡も観光資源として、活用している例があるのか、これからも全国のマインパークをたずねて、検証したい。



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