自動車販売店舗の再編・活性を刺激する
ホームセンターの新たなチャレンジ
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アヤハディオの「ディオワールド草津店」が
買取保証システム「Fシステム」に加盟、新車販売に参入

安部基史(本誌編集長)


■新車販売と車検入庫の促進でCRMに取り組む

 そこで同社は、オートセンター事業の抜本的な立て直しに取り組んだ。まず、大手カー用品店のFC本部の人材をスカウト、同業態のノウハウ注入に取り組んだ。検証の結果、これまで多数の需要に対する大量販売に慣れてしまい、競合との差別化につながっていたサービス工場での作業が、迅速かつ問題なく交換・装着を完了することが最終目的化して、いわゆるアフターフォローについてはまったく手つかずの状態になっている現実を知る。


 検討の結果、打ち出した事業コンセプトは、「モノの販売を上回るサービスを訴求する」。多数のお客様から、顔の見えるお客様を増やしていく。その実現戦略が新車販売への参入で、同時にピットの作業を訴求できる売り場環境へのリニューアル、品揃えではカーナビ・カーオーディオの取扱(もちろん取付に対応)を拡大するなど、大手カー用品店に負けないバリエーション充実を図ったのである。 新車販売の参入は、(1)メーカーを問わず扱いたい、(2)女性やファミリーの来場が多数を占めるホームセンターの顧客層に受け入れられる車種を中心とする、(3)新車販売と併せて車検整備も訴求する等、を要件にスキームが構築された。

 なかでも(3)を重視、購入後3年後に精算のため必ず販売店に車両を戻すことになる買取完全保証による売りやすさ・買いやすさ、定期点検と6回分のオイル交換を含む3年間のメンテナンスパック「Fメンテナンス」の仕組みを評価して、エフシステム(株)の加盟店としての開店が決まったのである。

 店舗のスタッフは3名で、「カーライフアドバイザー」のポジションが与えられている。それまでカー用品コーナーでタイヤやナビ等の販売と交換を担当していた。25ピットの大規模サービス工場を併設、タイヤを年間10,000本販売、車検1,000件、オイル交換も多い時は1日に60台をこなす圧倒的な実績を持つ同店だが、自動車販売では常識化している、顧客や車両情報を車検証等から把握することには対応していなかった。そこでエフシステムでは、自動車販売は自動車を販売した時からビジネスが継続するという部用品とは異なる実際の理解を中心に、スタッフ教育も担当し、2010年春からの研修会を通じて、自動車販売について意識と知識の強化に注力した。また、オープン以降も営業担当者を派遣して、随時教育研修の機会を提供し続けている。

 スタッフは現在、車両の販売とフォローに集中している。車両購入時にオートセンターで購入した用品類を同時に装着する場合等は、カー用品の売り場担当、サービス工場の担当スタッフと連携して対応する。

 展示車は売り場内に3台、実際に販売する現車でもあり、別途サービス工場に2台の配置が可能である。スペースの制限もあるが、ホームセンターの顧客層に合わせて、軽自動車もしくはコンパクトカーの展示が基本である。なお展示車は、各社のディーラーからの無料貸し出しで、車種や展示期間はディーラーの要望を踏まえつつ決定している。
 試乗にも対応するが、大多数のお客様は希望されないという。同店では、すでにディーラーを回って試乗や商談を経験していること、軽自動車やコンパクトカーの代替客は、メーカーが違ってもドライブフィールは変わらないと考える傾向が強い等が理由と分析している。

 2010年9月のオープンから1年で、約100台の新車を販売した。すべて新規客で、女性が60%を占め、年代は20代後半〜30代、子供のいるファミリーが多く、軽自動車が60%、コンパクトカー20%、その他10%。予想より軽自動車が人気を集める結果となった。買い方は納期の短い展示車の引き合いがほとんどで、カタログを見ての販売は限られているという。この間の車検入庫は約1,000台に達している。

 草津店では1年間の好成果を踏まえ、2012年にはショールーム(まさに売り場である)をさらに拡張する計画だ。また、懸案のCRMについては、車検入庫のみのお客様への代替訴求や購入客へのセール招待などの活動に取り組んでいきたいという。

 繰り返すが、同店のオープン時には顧客データはゼロで、新規店舗として販売をスタートしてわずか1年で100台を販売したのである。これはホームセンターの圧倒的な集客力だけの結果ではない。お客様の目線で、新車販売店としてのCSの提供を忘れない、基本の基本が徹底できたことが好影響につながったと評価したい。

 今後、店舗もスタッフも経験を積み重ねて、CRの仕組みをマスター、顧客データの活用手法を確立させる考えだ。四日市店など他のディオワールドでの開店も検討していくという。どうやら既存の自動車販売店には、たいへんなライバルが誕生しつつあるようだ。

 課題としては、入庫増加に対応したサービス工場の環境整備が急がれよう。あまりにも多数のタイヤ交換需要だが、所定のタイヤを各ピットに運ぶのはメカニックの力仕事で、効率性に欠ける嫌いがある。このあたりの動線や保管庫の再整備が必要のように感じられた。

コミュニケーション・ストール環境も用意されている


シンプルな商談テーブル

シーズンを迎えて冬タイヤの販売・交換が本格化


展示車以外はカタログで商談。国産全メーカーを取り扱う




車検入庫にも積極的(案内のチラシ(上))。もちろん用品販売も折り込みチラシの半分のスペースを割いて訴求(下)。

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