3.アプローチ

 他の取材の関係から、新潟市内に宿を取った。前夜は、日本海の海の幸を肴にアルコールが進み、取材班全員が恒例の二日酔いの中、早朝に出発する。まずは「朝日村役場」を目指す。実は「ゴールドパーク鳴海」は、土・日、祝日のみ営業であるが、無理を言って平日に取材をお願いしたため、同村役場観光課の職員の方が開錠を含め、現地取材に同行していただくことになっていたのである。新潟市から国道7号線を約60km北上。所要時間約1時間半、大きな渋滞もなく約束の9:30少し前に役場へ到着した。

 ご挨拶を終え、須貝誠一課長をはじめ職員2名で同行していただくことになり、いよいよ出発。

筆者:「ここからどれくらいで着きますか?」
課長:「近道して行きますから、小1時間でしょう。少し山道を走りますが、クルマはどれですか?」
筆者:(ハリアーを指さし)「あれですけど…!?」
課長:「あ、だいじょうぶですね。我々のクルマについてきてください」

 役場のクルマは四輪駆動の頑丈そうなパジェロである。筆者の愛車ハリアーは、二輪駆動であるが、車高が高いということから、山岳路でも大丈夫と思われたようだ。しかし、アウトローダーではない。少々不安に思いながら、先を行くパジェロを見失わないように何とかついていく。

 山に向かって10分も走ると人家や田畑が見えなくなり、15分後には舗装も途絶え、砂利道に変わる。このあたりまでは、難なく追走できたが、だんだん山奥に入り、深いわだちと、大きな石がゴロゴロ、しかも左右から草、上から枝がウエスタンラリーアットしてくるようになると、山道のドライブに慣れていないハリアーはどんどん離されていく。
 とにかく慎重に、約30分。同乗者が車酔いをしない程度の速さで走り続けると、少し道が広くなっているところでパジェロが止まり、その横で須貝課長が山の林の中を見つめている。

筆者:「着いたんですか?」
課長:「いや、シメジがでてきているか、見に行ってます。この辺は天然のキノコが豊富なんですよ」

と少し自慢気。すると道もない森の中から職員の方が出てきて「今年は遅いですね。まだ採るには小さいです。では出発します。もう少しですが、1本道だから迷わないので、ゆっくり来てください」と気を使っていただいた。
 そのお言葉に甘えたわけではなかったが、慣れているとはいえ、ぐんぐんペースを上げるパジェロとは、みるみると車間が広がる。そして約15分後にやっとアスファルトの道「朝日スーパーライン」へ出て、そのすぐ横の駐車場へ到着した。
 約1時間のサバイバル・ラリー体験で、人間以外で出会えたのは、野生のウサギ、リス、そしてサルであった。

 坑道マップ
   
 
 駐車場(写真1)といっても、道路脇に10台ほどが止められるのスペースを確保しているだけだ。その横にトイレと電源室を兼ねた管理棟(写真2)があり、すでに職員の方は発電機を回すなど、準備を進めている。建物には「ゴールドパーク鳴海」の案内看板(写真3)が掲示してあり、坑道までの略図が書いてある。

課長:「ここから、歩いて坑道へ向かいます」
筆者:「どのくらい歩きます?」
課長:「10分ぐらいですね」

と、建物横の「鳴海黄金抗」と書かれた碑と小さい料金徴収所のプレハブ(写真4)があり、その横の山道を入っていく。

筆者:「えっ、まだ…」

 すぐに坑道があると思っていた我々は、さっさと出発する課長たちの後をあわてて追った。
 入口の小高い丘をまず登ると、次は細い山道の長い下り(写真5)になる。道中は山の自然がそのままで、都会人にはハイキング気分が味わえる。また途中にもタヌキ堀り(手堀りによる採掘方法)の跡らしき横穴(写真6、7)がいくつかあり、徐々に雰囲気が盛り上がってくる。
 道はアップダウンというよりほとんどダウンで、5〜6分で「黄金抗」「大切抗」の分岐点(写真8)へ到着する。まずは「黄金抗」へ向かい、それほどの疲れも感じずに分岐点からさらに5〜6分。小川を渡り、小さな休憩所(写真9)の前に「鳴海黄金抗」と書かれた坑道への入口(写真10)が現れた。


写真1:駐車場





写真2:管理棟



   写真3:坑道の案内看板                 写真4:料金徴収所     
       

   写真5:細い下りの山道                  写真6:山道の途中にもタヌキ堀りの横穴がある
      

   写真7:危険な穴は入れないようにしてある      写真8:山道途中の分岐点

      

   写真9:黄金抗前の休憩所                写真10:黄金抗入坑口
      



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