6.まとめ

 朝日村は、村紹介のパンフレット(写真32)では「四季彩ゆたかな みどりの里」「人と自然とやすらぎのふるさと」などをキャッチフレーズとして、以下のような施設や観光名所を紹介している。
写真32:朝日村のパンフレット

(1)みどりの里(道の駅「朝日」)
朝日村体験交流センター/農山村生活体験室、郷土料理体験室、多目的ホール、休養・宿泊施設から構成される都市と農村の交流、村民の休養の施設
日本玩具歴史館/全国から収集した郷土玩具約35,000点を展示収蔵
またぎの家/奥三面ダム建設のために閉村した民家を移築した資料館
まほろば温泉ふれあいセンター/温泉センター
朝日きれい館/スパリゾート施設
ナーサリーガーデン/温泉熱を活用し、バイオ技術により生産された山野草、花、果実を展示販売
シルクフラワー製作工房/朝日村産の繭(マユ)を使った手作りシルクフラワー教室
物産会館/朝日村の産物、土産物の販売
(2)布部ヤナ場
清流三面川に仕掛けたヤナで捕れたアユを、その場で味わえる。
(3)ぶどうスキー場
標高800m、リフト2基、全長2kmのダウンヒルコース
(4)鈴ヶ滝
落差55m、幅10m、渓谷に爆風轟音が響き渡る日本の滝百選に選ばれた名所
(5)猿田川野営場
猿田川の清流と原生林に囲まれたキャンプ場&散策路
(6)二子島森林公園
三面ダム湖に浮かぶ二つの島と対岸の森林38haの広大な公園。オートキャンプ場あり。
(7)虚空蔵グリーンパーク
自然の地形をそのまま活かしたハイキングコース。遊歩道延長約5km。
(8)朝日スーパーライン
全長52km、山形県朝日村を結ぶ特定森林地域開発林道。沿線はブナの原生林をはじめ、全国水源の森百選地として森林浴や山菜採りの名所が多数

 このように、自然を活用した施設や名所が多い中、朝日村の手による「ゴールドパーク鳴海」の紹介は、
―慶長時代、全国産金量の3分の1を産出した金山跡。高根の奥にあり、荒々しい岩肌が当時の作業の過酷さを物語っています。今、幻想の世界が「光と音」で繰り広げられます。―(原文のまま)

と記載されている。そして、場所を示す略図には「朝日スーパーライン」沿いに位置がプロットされている。これを見ると、気軽に行けると思ってしまうだろう。もしくは「細倉マインパーク」のように、整備された観光集客施設を想像するかもしれない。
 しかし、現実は、厳しい。“観光”と銘打っているが、“探検”の方が妥当な表現だろう。お気軽な自然の散策気分で行くと、山道を進む段階でバテてしまい、引き返す者も出てしまうのではと心配になる。ぜひ、紹介文に「自然散策が楽しめる遊歩道ですが、山歩きに馴れていない人には、十分な運動不足解消になるでしょう」などの一文を入れていただきたい。

 まだ比較する対象が「細倉マインパーク」しかないが、鉱山の遺跡として、関係のない造作や演出をしていない(一部あったが…)ここ「ゴールドパーク鳴海」の方が満足感がある。フィクションではない鉱山の歴史、作業の過酷さを体感できた。さらに、都会生活者の筆者には、坑道はもちろんだが、空に近く、風光明媚な深山の自然を散策する非日常体験も楽しめた。

 自然を楽しむことをアピールすることも、集客的利点として考えられる。取材時にも簡単に提案させていただいたが、“自然散策+坑道探検”を前提に、歴史と自然を目の当たりにする社会体験の場として訴求できるだろう。もちろん、これは東京的な発想かも知れない。クルマを少々走らせると、十分な自然を堪能できるご当地周辺の人なら、坑道探検こそ最大のエンターテイメントになるのだろう。

 つまり、ここの最大の魅力は、大自然は前提として、ありのままの坑道にある。あまりに人が来すぎても、自然破壊や、坑道内をより収容できるように整備されたりで、魅力が半減してしまうことも考えられる。ということは、自然・遺構の保護という観点からは、現状維持がベストのようにも感じる。

 明治時代に閉山され、内部の全容が明らかになっていない神秘性。そして、本格的な整備ができず、坑道が短いというデメリットも、逆に秘境の探検気分を味わえる魅力に、相殺されている。何しろ、10月から5月までは、雪の中に姿を消しているのだから。
 短い越後の春と夏、思い切りその息吹を感じる自然の中で、「ゴールドパーク鳴海」は、まさに我々に黄金郷の夢をかいま見せたのである。

 最後に1つリクエストを言わせてもらうと、駐車場に飲料の自動販売機を設置していただきたい!(帰りの上り山道はきつかった)
 しかし、今度は飲み終わった容器のゴミ問題が出てきてしまうか・・・。
 読者の皆さん、ここを訪れるときは、山歩きの準備をして、水筒持参でお願いしたい。

 このような観光坑道が全国にまだあるのか、もっと違った工夫がされている施設があるのか、次のレポートに期待されたい。



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