5.近代鉱山の大型機器展示がリアルで迫力

 ■坑道マップ




 マグシーバーを渡された受付から坑道入口までは徒で歩約3分、両側はうっすらと紅葉を始めた雑木で整地され、丸太で入口を補強した古い坑道に(入ることはできない)、トロッコを突っ込ませた格好の展示もあり、臨場感を演出している(写真4)。やがてトラック1台が楽に通れる規模の石造りの立派なトンネルが見えてくる(写真5)

 操業当時、実際この坑口は、鉱石や坑夫を乗せたトロッコ電車が行き来していたという。これほどりっぱなトンネルであれば、観光でもトロッコ電車で入っていった方が、気分が盛り上げるのに・・・などと勝手に思っていると「オープン前は、トロッコ電車で入坑する計画もあったのですが、法規制やコストから断念し、歩いて入ることになりました」という。残念。

 観光坑道の中は、水滴防止や安全対策のためか、白いトタンで天井、左右の全面を覆った近代的なトンネルの造作で“岩肌ゴツゴツ”的ではない。ちょっと拍子抜けしていると、すぐにマグシーバーからナレーションが聞こえてくる。
 その解説を聞きながらやがて「坑内見張所」へ到着する。すると、トンネル内は一変し、岩肌がむき出しとなる。そこから道は二又に分かれ、交差点の壁には大きな案内図を掲示してある。1周約800mの坑道探検は、右が順路、左は帰り道という表示。早速順路に沿って先へ進む。

 最初に登場するのは「坑内見張所」。ここは産出物の金や銀の持ち出しを防止するため、坑夫たちが毎日点検を受けて入出坑していた場所である。
 マネキン人形を使って、リアルに再現・・・と思ったら、立っている人形の顔はひげを生やした西洋系のいい男(写真6)。「あれっ?」と思ってよく見ると、『鯛生金山の近代的操業を始めたイギリス人“ハンス・ハンター”』であるという説明書きがある。「なるほど」と納得していると、横のカウンターに座っているマネキン2体の顔付きもまた西洋系(写真7)で、どうしても“デパートのマネキン”にしか見えない。その隣にある「更衣室」に置かれたマネキンの顔は東洋系で違和感はない(写真8)
 ハンス・ハンターは仕方ないにしても、鉱夫もまたバタ臭い“いい男”というのには失笑を禁じ得ず、現実感がない。皆さんは写真を見てどう思われるか?

 次は「第一立坑」。10m四方程の広い空間が現れ、「立坑巻上機」と書いた大型の機械が設置され、そこからワイヤーロープが斜め上方に伸びている(写真9)。そしてその前方には、エレベーターが設置してある。ここから深さ510mまで立坑が続いているため、このワイヤーにより採石や人の上げ下ろしをしていた場所である・・・とマグシーバーから声の解説が入る。
 実はこのマグシーバーは、ゾーンごとに説明や効果音、再現ドラマ仕立て解説などが自動的に流れ、自然と目の前に出てきた光景や展示の理解を深められる。丁寧で飽きがこないような配慮だろうが、絶え間なく音が流れているため、これが意外とうるさく感じるのだ。複数人で歩いていると、会話がしづらいのも難点である。何か改善が欲しいと思うのは贅沢か・・・。

 さらに奥へ進むと、坑内で実際に走っていたトロッコ電車と鉱車(ダンプトラック)が展示してある(写真10)。同坑道は近代鉱山の遺構なので、坑道を大きくして、このような近代機器を活用した効率的な採掘を行っていたのである。大型機器の展示(「ボーリング」「水平掘削」「上向き掘削」「排水ポンプ」等)は他にも多数あり、リアルで迫力がある(写真11)

 また途中の坑道の交差点となる広い場所では、創業当時の写真や坑道構造・掘削法解説をパネルで展示(写真12)、また実際に使われていた掘削機器も並べて、分かりやすさに配慮している。なかでも明治以降の近代鉱山として栄えた山ならではの写真はとてもリアルであった。またベンチを設置した休憩所も設け、障碍者やお年寄りにも配慮していることにも好感を持てた。

 坑道の再利用として特産となっているのが、坑道貯蔵酒「黄金浪漫」(写真13)。坑道内は年間一定気温で多湿のため、酒類熟成には最適の貯蔵庫だという。そこでカメに詰めた焼酎をここで熟成させて「黄金浪漫」という名称で販売しているのである。これは、福岡県側の矢部村にある坑道部分でも実施されている(http://www.kitaya.co.jp/kinzan.html)。


写真4:
遺構をそのまま利用した演出


写真5:石造りの立派な入坑口


写真6:近代操業の創始者“ハンス・ハンター”


写真7:どう見てもデパートのマネキン!?


写真8:こちらは、典型的な東洋人


写真9:第一立坑の巨大なワイヤー巻上機


写真10:トロッコ電車、ダンプトラックは
迫力満点



   写真11:近代鉱山を象徴する大型機器も展示
        

   写真12:近代鉱山ならではの当時の写真や、坑道構造解説パネルは、シンプルな構成でわかりやすい         
        

   写真13:坑道貯蔵酒「黄金浪漫」の貯蔵庫
        




前ページへ    次ページへ

ライン


トップ