VGJ、販売網の「ハブ&スポーク戦略」を加速
新コーポレートデザイン「モジュラーコンセプト」を導入

安部基史(本誌編集長)
更新日2012年4月17日


 フォルクスワーゲングループジャパン(VGJ)は、2012年の新車販売計画を6万台(前年比20.0%増)と発表。実現のため、販売網の強化や新型モデルの投入、顧客との関係強化などに重点的に取り組む計画である。

 2010年にDUO店の展開が終了した販売店の強化については、市場規模に合致した事業体制を構築して販売効率の向上および持続的な成長、そしてCSの向上を目的に、店舗が立地する地域の商圏ポテンシャルに対応した3形態を規定する『ハブ&スポーク戦略』を打ち出している。

 同戦略では、全国を410カ所の商圏に分割、このうち333カ所の店舗を、新車・中古車・サービスの機能を備えた大都市圏向けの「フルファンクショナル店(FF店)」、地方都市向けの「ブランチ店(B店)」に分類。さらに残りの77カ所はFF店・B店のアフターセールスを補完する店舗として、サービスだけを提供する「サテライトサービス(SS)」とする計画である。早期実現のため、販社の複数店舗の運営を推奨するという。


急速に変わる自動車販売の最前線

 当社刊「自動車販売店・売れる空間と仕組みの最新」第1号では、2002年当時、初めて「マーケット・プレイス」が導入されたフォルクスワーゲン足立、フォルクスワーゲン世田谷、フォルクスワーゲン江戸川の各店舗について、詳細なレポートを掲載した。当時、自動車販売店は「来店型」への営業スタイル転換に舵を切っていた。その中で、店舗の空間機能の高度化、さらにはブランド感の打ち出しに成功したのがマーケット・プレイスだったように思う。国産車の販売店CIではオプションの位置づけだった空間機能(例えば納車専用室、入庫時の診断スペース等)が、見事に標準化され、キッズ・コーナーの玩具類でさえビートルのデザインモチーフが表現されるなど、次世代感の高いデザイン仕様だった。

 それから10年も経たないというのに、早くも見直しが始まった。日本市場は、顧客の嗜好や車への認識も急速に変化している。この変化に対応できなければビジネスに生き残れない大競争の時代に、顧客接点あるいは顧客コミュニケーション拠点としての店舗の重要性はますます大きくなっている。

 店舗網の再編と同時に、「マーケット・プレイス」に変わる新しいコーポレートデザイン「モジュラーコンセプト」での改装がスタートしたのである。対象は234店で、90店舗は内外装の変更、144店舗は建物の増改築や移転などが必要となるようだ。例えば年間300〜399台の新車販売が期待できる商圏の店舗(FF店)は、ショールーム展示5台とサービス5ベイ、B店はショールーム展示2台とサービス2ベイといった規定が適用される。


■ホワイトを基調、革新的でスマートなイメージを表現

 VGJによると、「モジュラーコンセプト」は、革新的でスマートなブランドイメージを表現しており、デザインの重要要素は建物正面に設置したホワイトフレームで、「店舗の存在間を際立たせている」という。ショールームは、基調は白で統一され、展示スペースの床は薄いグレーのタイル、ラウンジ(待合コーナー)の床はチェリー材を使用したフローリング、その他金属を使用した什器類などはシルバーまたは黒を使用して、シンプルかつ洗練されたイメージとなっている。店内で唯一色があるのは、レセプション(受付)の上に掲げられた「Welcome to Volkswagen」と書かれたウェルカムパネルの青のみである。

 展示車は並列配置として、設計の自由度と柔軟性を高めている。従来の「マーケット・プレイス」ショールームの場合、ある程度の規模と正方形のスペースが必要だったが、今回の「モジュラーコンセプト」は、1単位2.1mのモジュールで設計、車一台分を6.3m×8.4mに設定して組み合わせていくことで、自由度が高く柔軟性のある設計が可能になったという。展示車種の規定は店舗に委ねているが、ショールームに「ハイライトステージ」とネーミングされた一角を設け、その時の旬のモデルを展示するスペースとしている。

 導入に際しては、VGJが看板や床材、塗料等の現物を提供することで、販売会社の負担を軽減しているようだ。なお、日本での第1号店は「フォルクスワーゲン六本木」(2009年7月)である。

 この他、顧客数の拡大に向け、世界統一の認定中古車制度「DAS WeltAuto(ダス・ヴェルトアウト)」を導入、CIサインを掲げている。すでにモジュラーコンセプトが導入された店舗では、屋外に専用の展示スペースが用意され、販売が始まっている。認定中古車単独の店舗については建物にデザイン規定はしていないが、新車販売店とトーン&マナーは統一し、床や什器の基調は合わせるようにしている。


【モジュラーコンセプトで新設された「フォルクスワーゲン戸田公園」】
住所:埼玉県戸田市氷川町3-1-30
従業員数:13名 (店長1名、営業5名、サービス5名、事務2名)
展示車両台数:ショールーム 8台
サービス施設:6サービスワークベイ+検査ライン
営業開始日:2011年9月10日 




埼玉県戸田市の「フォルクスワーゲン戸田公園」。基調のホワイトが印象的。




認定中古車「DAS WeltAuto」を併設



夜になると店内の照明に映えてホワイトフレームが額縁のよう




展示スペースの床はグレーのタイル




ラウンジはフローリングの木目で暖かい雰囲気に



商談コーナーも木目とガラスですっきりとしたデザイン



見取り図(CG)

※写真は全てVGJ様からご提供いただいた

 


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