秋田内陸縦貫鉄道 のりものまつり(1/3)
更新日2012年6月1日




 秋田内陸線のりものまつりが2012年5月19・20日の両日、北秋田市阿仁銀山の阿仁合駅周辺を会場に開催された。
 会場となった阿仁合駅前は飲食・物販コーナーが立ち並び、また鉄道グッズの販売コーナーも開設。阿仁庁舎前では働くのりものが勢揃いし、パトカーや消防車、救急車、林業用のグラッフル・プロセッサーを展示し、子どもたちが運転席に乗せてもらっていた。また、羽後日産モーターが出店した電気自動車「日産リーフ」の試乗車も用意されていた。セグウェイの試乗コースも設けられていた。高速バスや路線バスの展示、駅に併設された商工会阿仁支所会議室では鉄道模型の展示もあった。
 駅前広場ではその他に、大道芸、マジックショーのほか、秋田県内の各地からやってきたゆるキャラが大集合、子どもたちの人気を博していた。
 実行委員会の発表によると、我々が伺った初日は1050人、2日間で2000人以上が来場した。初日は450人が内陸線を利用しての来場とのことである。


○秋田内陸線とは

 秋田内陸線は鷹巣〜角館間94.2kmを走る秋田内陸縦貫鉄道が運営する。
 秋田内陸線は、大正11年「秋田県鷹巣より阿仁合を経て、角館に至る鉄道(鷹角線)として建設計画が決定し、昭和9年、まず鷹巣〜米内沢間が開業、続いて昭和11年には阿仁合まで、そして昭和38年には阿仁合〜比立内間が開業し、全長46.0Kmの国鉄阿仁合線として営業を開始した。

 一方、角館〜松葉間の19.5Kmは、昭和45年国鉄角館線として開業し、両路線は昭和61年10月末まで営業された。鷹角線の未開通部分松葉〜比立内間の29.3Kmの早期開通が望まれ、昭和55年「日本国有鉄道経営再建促進特別措置法」に伴い、建設工事が中断しておりましたが、昭和59年10月全線開通を熱望する沿線8町村と県は、産業、経済、観光の振興に鉄道の開通は欠かせないとし、第三セクターによる秋田内陸縦貫鉄道株式会社を設立し、未開通部分の工事に取り組んだ。
 そして平成元年4月、建設計画が決定してから半世紀以上を経て、鷹巣〜角館間94.2Kmはついに全線開通となった。

○まつりはたくさんの人で大賑わい

 初日の19日(土)、午前9時半頃に現地に到着した。クルマでイベント会場に向かうと、オレンジ色のジャンパーを着たスタッフの誘導で、阿仁合駅からすぐ近くの駐車場へ。イベント開始は10時のため、広い駐車場にはまだそれほどクルマはなく、すんなりと止めることができた。イベント会場からはJ-POP、洋楽などのヒット曲が流れ、イベント気分が盛り上がる。
 イベントがスタートする前に会場を見て回ると、準備を進めているスタッフの他、すでに多くの人が集まっていて、談笑したり、写真を撮ったりとにぎやかな雰囲気である。子ども連れのファミリーの姿も多く見られた。
 午前10時になるとオープニングセレモニーがスタート。最初に秋田内陸縦貫鉄道株式会社の酒井一郎代表取締役社長が開催にあたり、「ふだんあまり触れることのできない乗り物にたくさん触れていただくことができ、また鉄道模型なども展示しています、今後も地域の春のまつりとして取り組んでいきたい」とあいさつされた。続いて北秋田市の津谷市長が壇上に上がり、「内陸線の存続には皆さんの協力が必要です、今日のイベントで内陸線に乗っていただいて、いいな、と感じていただけたら」などとあいさつした。
 この後、北秋田市の特産品で、最近テレビでも取り上げられたことで全国的に人気となっているバター餅200個の餅まきが行われた。酒井社長と津谷市長が高所車に乗り込んで餅をまくと、来場者は楽しそうに、でも熱心に手を伸ばしていて、セレモニーは盛り上がった。
 その後も、阿仁合駅に到着した車両から続々と乗客が降りてきて、会場はますますにぎわいを見せていた。

 イベントのメーンは内陸線車両基地体験で、午前と午後の2回行われた。開始30分前の受付時には長蛇の列ができ、人気の高さをうかがわせた。基地では30トンの内陸線車両を子どもたちが素手で押して動かす挑戦や、特設した往復60メートルの軌道を軌道バイクで走る体験が人気となっていた。
 また、急行列車内では、子どもたちが運転士の制帽をかぶり、運転席に座って操作器に触れたり、マイクで車内アナウンスに挑戦したりと貴重な体験をしていた。
 内陸線保守車両見学会では、除雪車両が線路上で180度回転して方向転換し、除雪用の羽を広げるデモンストレーションを行い、子どもだけでなく、大人からも楽しんでいた。
 阿仁庁舎前では消防車、パトカー、救急車、林業用の働くのりものを展示、子どもたちが運転席に乗せてもらい、おとうさん、おかあさんに写真を撮ってもらっている姿がたくさん見られた。
 また、大人は羽後日産モーター大館店が出展していた電気自動車「ニッサンリーフ」の体験試乗を楽しんでいた。

 秋田県内から各地のキャラクター13体が応援に来ていて、秋田内陸線のキャラクター「ないりっくん」のほか、大館市からは「はちくん」、鹿角市「たんぽ小町ちゃん」、秋田ふるさと村「ノブくん」などなど、“ゆるキャラ”が大集合。子どもたちの歓声があがり、一緒に写真を撮る姿があちこちで見られた。

 阿仁合駅前は飲食・物販コーナーが立ち並び、ラーメンや焼きそば、カレーパンといったもののほかに、この地域ではよく食べられているという馬肉を使った料理も見られた。馬肉と言えば馬刺ししか食べたことがなかったため、興味津々である。売られていたのは馬肉スジ煮込み、馬肉の串焼きのようなもの、馬肉ハヤシ、馬肉丼、など。駅に併設されているレストラン「こぐま亭」で馬肉丼と馬肉ハヤシライスをいただいたが、どちらも柔らかく、臭みもなく、たいへんおいしかった。そのほか、比内地鶏の鉄板焼き、たけのこ汁もたいへんおいしくいただいた。残念なことに、近頃全国的に人気となっている「パター餅」は売り切れてしまい、また地元で人気のオリジナルアイス「じゃっぷう」のことは事前知識がなかったので食べ損なってしまった。そういえば、強い日差しの元で大勢の子どもたちがソフトクリームを食べていたけれど、これだったのか・・・少し心残りである。

 この他、鉄道グッズの販売コーナーも開設。秋田内陸縦貫鉄道のグッズはもちろんのこと、秋田の第三セクターである由利高原鉄道、岩手県の三陸鉄道、山形鉄道、総合車両(旧東急車輌製造)の5社が鉄道グッズを販売。鉄道マニアでなくても興味をひかれるグッズの数々に、子どもも大人も見入っていた。


○ふれあいショップひまわりでおみやげを購入

 阿仁合駅前の広場にあるJA阿仁合支店の一角にある「ふれあいショップ ひまわり」は地元の産品の直売所である。ここの前には、さきほど餅まきでまかれた「バター餅」の幟が立っていた。実はバター餅のことをよくしらなかったのだが、その響きからとてもおいしいに違いないと、買いに入ってみた。
 店の中はスペースの半分が軽食&休憩コーナー、半分がお土産品コーナーとなっている。バター餅は残念ながら売り切れだったが、一口試食をさせていただくことができた。とてもおいしかったので、これはいつかどこかで入手しなくては。
 他にポットから熱々の「くろもじ茶」をいただいた。これは楊枝で使うクロモジの木を粉にした健康茶で、膝痛、腰痛などの関節の痛みに効果があると言われているとのこと。クセもなくおいしかったので、お土産に購入した。
 ふれあいショップひまわりにいた女性スタッフの方は、今までここでこんなにたくさんの人を見たのは初めて!と嬉しそうに話していたのが印象的だった。

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 来てみてよかった、参加して楽しかった「のりものまつり」だが、最後に主催者・運営者にいくつかの改善提案をお伝えしておきたい。

“秋田内陸縦貫鉄道の社員、観光アテンダントなど総勢 19名のメンバーで、内陸線や沿線の話題などを毎日更新”しているという「秋田内陸縦貫鉄道!トコトコ鉄道日記」を見ると、会場設営やPOPの設置など、この「のりもの祭り」の準備に社員総出で取り組んでいる様子が紹介されている。

 準備万端、開催当日を迎えて、“サプライズ”と位置づけていた高所車に登場する市長・社長によるセレモニーも円滑に進み、多数の来場者のにぎわいで気が緩んだのだろうか、あるいは実直な性格の方が多いためなのだろうか、熱心なファンをはじめ子供連れのファミリーを中心とするイベントとして、不相応の応対が一部のスタッフに見られたのは残念であった。

 例えば、到着した車両を撮影しようと改札に出ると「それ以上入ってはいけない」との頭ごなしのがっかりさせる指示の声、昼食時は座る場所が不足しているのも関わらず、混雑している場所への誘導を繰り返すアナウンス(大会事務局の担当であろう)などである。

 慣れていないからしょうがない、では困る。これだけ多数のファミリー、鉄道や地域にとっては大事な顧客である。第一印象が劣るばかりに鉄道離れ、街離れを引き起こす可能性だって否定できない。次回は、ぜひ一期一会の心づもりで、「おもてなし」にトライみてほしい。


軌道モーターカーの展示


秋田内陸縦貫鉄道株式会社の酒井一郎代表取締役社長


北秋田市の津谷市長


セレモニーの「餅まき」


餅をもらおうと手を伸ばす来場者


はたらく乗り物たち その1


はたらく乗り物たち その2


ふれあいショップひまわり


ゆるキャラにも会えた


鉄道グッズの販売コーナー


東北の他の鉄道会社もグッズを販売

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