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夕張・石炭の歴史村(13) |
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5.訪れてのインプレッション(4) (2)石炭博物館 ○模擬坑道内は炭鉱生活の変遷を、マネキンを使い展示 最初のゾーンは「炭鉱風俗館」。「明治・大正年代」「大正年代末期から昭和初期」「昭和中期ごろから」の3つのコーナーにわけて、炭鉱の労働・生活を再現している。 それぞれトンネル幅の約半分にマネキン人形を使った炭鉱の再現が行われ、反対側の壁には当時の写真や工具類が展示されている。 各時代のマネキン人形による再現のシーンは次の通りである。 ●「明治・大正年代」/女性が掘り出した石炭をかき集めたり、照明器具のランプを磨いたりして、現場で働いていた。 ●「大正年代末期から昭和初期」/切端(きりは:石炭を採掘する場所)では、まだツチとノミの手掘りで、掘り出した石炭は馬によって運搬されていた。また、女性は現場ではなく、戸番(坑道の通気戸門の番)を担ったりして働いていた。 ●「昭和中期ごろから」/支保は鉄製になり、切端では防塵マスクを装着して削岩機を使い、機械化が進む。またさらに近代になると、宇宙服のような頭からつま先まで包み込む作業着になり、安全性の向上が図られた。 以上の全ての再現にスイッチ式の音声説明機が設置され、自分のタイミングで解説を聞けるように配慮されている。また、各コーナーは10体ほどのマネキンで再現され、顔に表情があり、迫力あるシーンとなっていた。 次のゾーンは「炭鉱機械館」。ここでは、炭鉱で使われた安全灯(ランプ)やワイヤーロープ、電話機等の道具類から、削岩機やコンプレッサー等の機械を年代順に展示して、変遷を見ることができる。しかし、先ほど2階展示室で見た道具類とどういう線引きで展示場所を変えているのかよくわからなかった。 ○作動中の機械轟音が襲ってくる臨場感で演出 その先は「採炭作動館」のゾーン。最新の採炭大型機械による動態展示である。各ゾーン間は、自動ドアによる明確な境界があり、ドアを開けた途端に、作動中の機械による轟音が襲ってくる。この臨場感を前のゾーンに漏らせたくないという意図だったのだ。機械は感知するセンサー式でスイッチが入る。「ウィーン」という電源が入ったような始動音から「ゴー、ガリガリ」という大型機器の音への変化の後、直径1mほどのドラムカッターがグルグル回りながら削岩し、その下では昆虫の足のようなアームで、その根本のベルトコンベアーに掘り出された石炭をかき集めて運び出す。1回の動作時間は3分ほどであるが、機械化が進んでいると耳で聞いてわかっていても、実際目の前で動いている様子は圧巻だ。 機械が停止し、ふと横を見ると、キャップランプ付きのヘルメットが大量にコンテナに積んである。横にガイドボードがあり「坑道まっくら探検へようこそ」と子供用の表示がある。実はここから先が「史跡夕張鉱」で、実際の坑道や採炭現場の見学である。早速ヘルメットを装着して奥へ進む。 ヘルメットを装着して階段を下りると、すぐにメガネをかけたインテリ風の人形が現れる。説明ボードには「捜検所」と題され、「安全確保のため、発火具、喫煙用具、その他危険物を持ち込まないように、入坑者ひとり一人を検査する場所」と解説されて、姿見鏡も設置されている。マネキンであるから、当然検査はないが、ここから危険な坑道へ入る雰囲気を盛り上げる演出に一役かっている。しかし、このマネキンをよく見ると、体は女性であることが一目でわかってしまい(胸部)、非常に気持ち悪かった(もしかしたら、髪とメガネでおばさんマネキンを変装させていたのかも)。 ○「捜検所」から先は「まっくら探検」に相応しい暗闇 この「捜検所」から先は照明がほとんど無くなり、キャップランプだけが頼りとなる、まさに「まっくら探検」でワクワクしてくる。照明がほとんど無くなるころには、トンネルの様子も徐々に古ぼけた質感に変わってくる。 最初の再現は「掘進作業現場」。先ほどの「採炭作動館」で動いていたドラムカッターで掘り進む様を再現している。しかし、キャップランプの照明はスポットライトとして“点”ではみえるが、“面”では見えないため、大きな展示物は全体がつかみづらい。また逆に説明ボードはキャップランプの光が反射して、当たったところが消えてしまい読みづらい。ここはぜひバックライト付きのボードか、小さなライトを当てるなどの工夫がほしいところである。 また、全くライトアップされていないところにマネキンが立っていてびっくりする。これが狙いであればOKであるが、そのとき確認できなかったが、ぶつからないような安全面の配慮がされていれば、問題ない。 以上のような雰囲気で、200m弱の坑道探検が続く。そこでは、緊急時のテント「救急ハウス」、鉄製の支保を多数使った「長壁式作業現場」、「岩削棚」「上添坑道」「下添坑道」「救急バルブ」「誘導無線」「「ゲート坑道」「ガス抜き作業」「ガス自動警報機」「40kwダブルチェーンコンベア」・・・など、小さい展示も含めると盛りだくさんのプレゼンテーションが続く。残念だがそれらの説明ボードは、表記が多い・難しいことから、内容を理解するのに時間がかかりすぎるのが見学者にはつらい。 しかし、大きな規模の再現展示では、音声による説明をリピートして流していことは評価すべきだろう。最後に、情景展示に使われている人形(マネキン)の顔であるが、全て典型的な東洋人であった。さらに泥だらけなどのリアルな演出も見られた。 |
「明治・大正年代」のシーン 2階のレイアウトとケージへの動線 再現シーンの全てに設置されていた音声説明機 「大正年代末期から昭和初期」まだ手掘り 「昭和中期ごろから」機械化が進む 「採炭作動館」の大型ドラムカッター等が実際に作動 大量に用意されたキャップランプ付きヘルメット 「捜検所」のマネキン。体(胸部)は女性? リアリティのあるマネキンの表情 |
「炭鉱機械館」の展示物 |
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